- 16:8を12週行ったTREAT試験では、1日3食との体重差は0.26kgで偶然の範囲だった(Lowe et al., 2020)。
- 同じカロリー制限に時間制限を足しても1年後の差は1.8kg、カロリー計算なしの8時間も毎日25%減らす方法と差がなかった(Liu et al., 2022; Lin et al., 2023)。
- 食べる量をそろえた試験では、時間を絞っても減り方は同じだった(Maruthur et al., 2024)。体重の差の多くは食べる量で説明できる可能性があるが、早い時間帯に食べる試験では差が出たものもある(Jamshed et al., 2022)。
- 隔日断食・5:2も個々の試験では毎日の制限と同程度。まとめた分析では隔日断食が1.3kgほど多かったが、24週以上の試験では差は見えなかった(Semnani-Azad et al., 2025)。隔日断食は脱落が38%と多かった(Trepanowski et al., 2017)。
- TREATでは減った体重の約65%が除脂肪量。運動と組み合わせた研究では除脂肪量ははっきり減らなかった(Hays et al., 2025)。
- 糖尿病の薬を使う人、がんの治療中の人、摂食障害の既往、妊娠・授乳中、成長期の子どもは自己判断で始めない。
よく言われていること——16時間何も食べなければ、脂肪が燃えて痩せる。食べる時間を決めるだけなので、カロリー計算もいらない。
研究が示していること——食べる時間を絞ると、たしかに体重は減ることが多いです。ただし、同じだけ食事を減らした人と比べると、差はほとんどありませんでした。食事の量をそろえた試験では、時間を絞っても体重の減り方は同じでした。減った体重のうち筋肉などの割合が大きかった試験もあります。
このページで分かること
- 16時間断食(時間制限食)は、ふつうのカロリー制限より痩せるのか。1年続けた試験の結果。
- 隔日断食や「週2日だけ減らす」5:2は、毎日少し減らす方法と比べてどうか。脱落の多さも含めて。
- 「食べる時間帯に意味がある」という説と、「結局カロリーが減っているだけ」という説の、どちらが試験で支持されたか。
- 筋肉が落ちる心配はあるのか。運動と組み合わせた研究では何が分かったか。
- 断食を試すべきでない人と、受診・相談の目安。
まず言葉の整理——「断食」にはいくつも種類がある
「プチ断食」「ファスティング」と呼ばれるものは、研究ではまとめて「間欠的断食」と呼ばれます。食べない時間を周期的につくる食べ方の総称です。中身は大きく3つに分かれます。
| 呼び方 | やり方 | このページで扱う試験 |
|---|---|---|
| 時間制限食(16:8など) | 1日のうち食べてよい時間を8時間などに絞る。残りの16時間は食べない。 | TREAT試験、中国の1年の試験、シカゴの1年の試験など |
| 隔日断食 | 断食日(ごく少量)と、ふつうに食べる日を1日おきに繰り返す。 | シカゴの1年の試験 |
| 5:2 | 週のうち2日だけ大きく減らし、残り5日はふつうに食べる。 | ドイツの50週の試験、英国の6か月の試験 |
比べる相手も大事です。「何も気をつけずに好きに食べる」と比べれば、どの断食でも体重は減りやすくなります。読者が本当に知りたいのは、「毎日少しずつ食事を減らす、ふつうのダイエットより得なのか」のほうだと思います。このページでは、この比べ方を中心に読んでいきます。
もう一つ、体重計の数字そのものの読み方にも注意が要ります。断食を始めた最初の数日は、胃腸の中身や水分が減るだけでも体重が動きます。1日の中の体重の揺れについては体重の日内変動にまとめました。数日の変化で効果を判断しないでください。
16:8を12週やった試験——体重の差は0.26kgだった
16:8を無作為化試験で確かめた初期の試験の一つが、米国のTREAT試験です(Lowe et al., 2020, JAMA Internal Medicine)。18〜64歳、BMI 27〜43の成人116人を2つに分けました。平均年齢は46.5歳で、6割(60.3%)が男性でした。
片方は12時から20時の間だけ好きに食べる16:8の群。もう片方は1日3食を決まった時間にとる群です。どちらにもカロリーを減らす指示はありません。期間は12週でした。
| 12週後の体重 | 変化(95%信頼区間) |
|---|---|
| 16:8の群 | −0.94kg(−1.68〜−0.20) |
| 1日3食の群 | −0.68kg(−1.41〜0.05) |
| 群の差 | −0.26kg(−1.30〜0.78) |
16:8の群は1kg弱減りました。ところが3食の群も0.68kg減っており、差はわずか0.26kgです。信頼区間(本当の差がおそらく入る幅)は0をまたいでいて、偶然でも出る程度の差でした。著者らの結論は、「ほかの取り組みなしの時間制限食は、1日を通して食べるより体重減少に効果的ではない」というものです。
著者らは、試験に参加するだけで対照群まで少し痩せたことにも触れています。「始めたら減った」という体験談がよくあるのは、このためかもしれません。比べる相手がいない体験談は、時間制限の効果なのか、気をつけ始めた効果なのかを見分けられません。
減った1.70kgのうち、65%が除脂肪量だった
TREAT試験には、もう一つ話題になった結果があります。対面で体組成を測った50人(各群25人)の解析です。体組成はDXA(エックス線で骨・脂肪・それ以外を分ける測定)で測りました。
16:8の群では、体重が平均1.70kg減りました。論文の考察によると、このうち1.10kg(減った体重のおよそ65%)が除脂肪量で、脂肪は0.51kgだけでした(Lowe et al., 2020)。除脂肪量とは、脂肪以外の重さです。筋肉のほか、水分や内臓なども含みます。
著者らは、ふつうの減量では除脂肪量の減りは全体の20〜30%ほどだと書いています。65%はそれを大きく上回る、という指摘です。また、手足の除脂肪量の指数は、群の間で−0.16kg/m2(−0.27〜−0.05)の差がありました。
ただし、読み方には注意が要ります。除脂肪量の変化を2つの群で直接比べると、差は−0.75kgで、偶然の範囲でした(この比較は多重比較を補正した広めの区間で示されています)。人数も50人と少数です。「16時間断食は筋肉を落とす」と言い切れる結果ではありません。一方で、「脂肪だけが落ちる」という宣伝もこの試験は支持していません。
著者らは理由の候補として、時間を絞ると食べる量が減り、たんぱく質も減るかもしれない点を挙げています。そして、時間制限食をするならたんぱく質を十分にとることが大事だと書いています。たんぱく質のとり方の研究はたんぱく質のタイミングで読み解きました。
だから読者がすることは一つです。体重計の数字だけでなく、ふくらはぎや太ももの張り、階段のきつさなど、体の使い心地も一緒に見てください。体組成計の数字の当てにならなさは体組成計の記事にまとめています。
カロリー制限と比べると、1年たっても差は出なかった
12週は短すぎる、という批判もあります。そこで1年続けた試験を2つ見ます。
1つ目は中国・広州の病院の試験です(Liu et al., 2022, New England Journal of Medicine)。肥満の139人を2群に分けました。登録情報によると、対象は18〜75歳、BMI 28.0〜45.0で、糖尿病の人は除かれています。両群とも、男性は1日1500〜1800kcal、女性は1200〜1500kcalに食事を減らしました。そのうえで片方だけ、食べる時間を8時から16時に絞りました。
| 12か月後の体重 | 変化(95%信頼区間) |
|---|---|
| カロリー制限+時間制限 | −8.0kg(−9.6〜−6.4) |
| カロリー制限だけ | −6.3kg(−7.8〜−4.7) |
| 差 | −1.8kg(−4.0〜0.4) |
139人のうち118人(84.9%)が1年後の測定まで残りました。時間を絞った群のほうが1.8kg多く減っていますが、信頼区間は0をまたぎ、偶然の範囲です。腹囲、体脂肪、除脂肪量、血圧なども同じ傾向で、差はありませんでした。著者らは、時間制限食はカロリー制限より有益ではなかったと結論しています。
2つ目は米国シカゴの試験です(Lin et al., 2023, Annals of Internal Medicine)。肥満の成人90人を、3つに分けました。12時〜20時の8時間だけ食べる群(カロリー計算なし)、毎日25%食事を減らす群、10時間以上の時間帯でふつうに食べる対照群です。平均年齢は40歳で、黒人が33%、ヒスパニック系が46%でした。
1年後、対照群と比べて、8時間の群は4.61kg(−7.37〜−1.85)、毎日25%減らした群は5.42kg(−9.13〜−1.71)多く減りました。体重に対する割合では、それぞれ4.87%と5.30%です。8時間の群と毎日減らした群の差は0.81kg(−3.07〜4.69)で、はっきりした差はありませんでした。
ここで目を引くのは食事量の変化です。1日の摂取量は、8時間の群で平均425kcal、毎日減らした群で405kcal減っていました。時間を絞った人たちも、結果としてほぼ同じだけ食べる量が減っていたわけです。なお著者らは、この人数ではTREと毎日の制限の差を見分けるには足りないと、限界に書いています。
2つの試験から言えるのは、時間制限食は「カロリー計算の代わりになる食べ方の一つ」にはなりうる、ということです。少なくとも「カロリー制限より多く痩せる方法」とは言えません。カロリー計算が苦にならない人は、今のやり方を変える理由は小さいと考えてよいでしょう。
「時間帯が大事」説と「カロリーが減っただけ」説
時間制限食を勧める側には、「体内時計に合わせて食べると代謝が良くなる」という主張があります。カロリーとは別に、時間そのものに効果がある、という考え方です。これを支持するように見える研究と、否定する研究の両方があります。
支持する側:朝早くに食べ終える試験
前糖尿病の男性に、体重が変わらないだけの食事を提供した試験があります(Sutton et al., 2018, Cell Metabolism)。6時間の間に食べて夕食を15時前に済ませる食べ方と、12時間の間に食べる食べ方を、それぞれ5週ずつ順番に行いました。体重が変わらなかったのに、早く食べ終える期間ではインスリンの効きや血圧が改善しました。
ただし、最後までやり遂げたのは8人の男性だけです(平均56歳、平均BMI 32.2)。著者ら自身が、女性を含むより大きな試験での再現が必要だと書いています。夕食を15時前に終える生活も、勤め人には現実的ではないでしょう。
もう一つ、肥満の成人90人の試験があります(Jamshed et al., 2022, JAMA Internal Medicine)。対象は25〜75歳で、平均BMIは39.6、平均43歳、80%が女性です。全員が同じ減量治療(カロリー制限)を受け、7時〜15時に食べる群と、12時間以上の間に食べる群に分けました。
14週後、早い時間に食べる群は体重が2.3kg(−3.7〜−0.9)多く減りました。一方、体脂肪の差は1.4kg(−2.9〜0.2)で、偶然の範囲でした。著者らは、この効果は1日の摂取量をさらに214kcal減らしたのと同じくらいだと換算しています。週あたりでは、守れた日は平均6.0日でした。
否定する側:食べる量をそろえた試験
「本当に時間の効果なのか」を確かめるには、食べる量を両群でそろえる必要があります。それをしたのが、肥満で前糖尿病などのある成人41人の試験です(Maruthur et al., 2024, Annals of Internal Medicine)。平均59歳で、93%が女性でした。
全員に同じカロリー・同じ栄養素の食事を提供しました。片方は10時間の間に食べ、80%を13時前にとる食べ方です。もう片方は16時間以内の時間帯で、50%以上を17時以降にとる、夜型に近い食べ方です。
12週後、時間を絞った群は2.3kg(1.0〜3.5)、夜型に近い群は2.6kg(1.5〜3.7)減りました。差は0.3kg(−1.2〜1.9)で、ほぼ同じです。血糖の指標にも差はありませんでした。著者らは、これまでの試験で時間制限食に見えた体重の効果は、摂取カロリーが減ったためかもしれない、と書いています。
この試験も41人・1施設と小さく、両群の初期体重に差があったと著者らは認めています。「時間帯には意味がない」と断定はできません。ただ、体重に関しては、今ある試験の多くは食べる量の減少で説明できる可能性があります。時間帯の効果があるとしても、大きくはなさそうです。
ただし90人の試験では、記録上の食事量は両群で同じくらいでした。それでも差が出ています(食事の記録は自己申告で、正確さには限りがあります)。
隔日断食・5:2は、毎日の制限より痩せるのか
時間制限食より強い方法として、隔日断食と5:2があります。これらも、毎日少し減らす方法と比べた試験があります。
隔日断食:減り方は同じ、脱落は多い
米国シカゴで、肥満の成人100人を1年追った試験があります(Trepanowski et al., 2017, JAMA Internal Medicine)。女性86人・男性14人で、平均44歳、平均BMIは34でした。3つの群に分けました。
- 隔日断食:断食日は必要量の25%、翌日は125%を食べる
- 毎日の制限:毎日、必要量の75%を食べる
- 介入なし
介入なしと比べた体重の減りは、6か月で隔日断食−6.8%、毎日の制限−6.8%と同じでした。12か月では−6.0%と−5.3%で、やはり差はありません。
差が出たのは続けやすさです。脱落は隔日断食でいちばん多く、34人中13人(38%)でした。毎日の制限は35人中10人(29%)、介入なしは31人中8人(26%)です。隔日断食の群は、断食日に指示より多く食べ、食べる日には指示より少なく食べていました。つまり、実際には「毎日少し減らす」に近づいていったのです。
もう一つ、気になる結果があります。12か月の時点で、隔日断食の群は毎日の制限の群より、LDLコレステロールが11.5mg/dL(1.9〜21.1)高くなっていました。著者らは、隔日断食は続けやすさ・減量・体重維持・心臓を守る効果のどれでも、毎日の制限より優れていなかったと結論しています。
5:2:最初は少し多く減っても、1年近くでは同じ
ドイツの試験は、BMI 25以上40未満の非喫煙者150人を50週追いました(Schübel et al., 2018, American Journal of Clinical Nutrition)。対象は35〜65歳で、半数(50%)が女性です。5:2の群は週2日だけ75%減らし、週全体では約20%減らします。毎日の制限の群は毎日約20%減らします。
最初の12週では、5:2が−7.1%、毎日の制限が−5.2%、助言なしが−3.3%でした。5:2がやや多く見えますが、差は統計的にはっきりしませんでした。50週の時点では−5.2%と−4.9%で、ほぼ同じです。著者らは、5:2は毎日の制限と「同等だが優れてはいない」と書いています。
英国の閉経前の女性107人の試験も、似た結果でした(Harvie et al., 2011, International Journal of Obesity)。平均BMIは30.6です。週2日だけ1日約2710kJにする群と、毎日約6276kJにする群を6か月比べました。体重の変化は−6.4kg(−7.9〜−4.8)と−5.6kg(−6.9〜−4.4)で、差は偶然の範囲でした。
「週2日だけ我慢すればよい」は、気持ちの上で楽に感じる人がいるかもしれません。しかし体重の結果で見る限り、毎日少し減らす方法と大きな違いはありません。どちらが続くかで選んでよい、というのが試験から言えることです。
研究をまとめると——差はあっても小さく、長い試験では消える
個々の試験だけでは偏りが出ます。たくさんの試験をまとめた分析も見ておきます。
2025年の分析は、無作為化試験99本、成人6582人をまとめました(Semnani-Azad et al., 2025, BMJ)。そのうち720人は健康な人、5862人は何らかの持病のある人です。すべての断食法と毎日の制限は、好きに食べるより体重を減らしました。
毎日の制限と比べて差が出たのは、隔日断食だけでした。その差は1.29kg(−1.99〜−0.59)です。隔日断食は時間制限食より1.69kg、丸1日の断食より1.05kg多く減っていましたが、著者らはこれを「ごくわずか」と表現しています。さらに、24週以上続いた試験(17本)に絞ると、好きに食べる場合と比べた効果しか見えなくなりました。
コクランレビュー(医療の根拠を厳しくまとめる国際的な取り組み)も、同じ方向です(Allaf et al., 2021, Cochrane Database of Systematic Reviews)。18研究・1125人を統合したところ、好きに食べる場合と比べた短期の体重差は−2.88kg(−3.96〜−1.80)でした。毎日の制限と比べると、短期で−0.88kg(−1.76〜0.00)、3か月を超える期間では−0.56kg(−1.68〜0.56)で、はっきりした差はありません。
このレビューで見落とせない点があります。死亡、脳卒中、心筋梗塞などを調べた試験は1本もありませんでした。期間も4週〜6か月です。断食が長い目で病気を減らすかどうかは、まだ試験で確かめられていません。
まとめると、断食は「毎日の制限と同じくらい痩せる方法の一つ」です。特別に脂肪を燃やす方法だという根拠は、今の試験からは出ていません。
筋肉を守るなら——運動と組み合わせた研究
TREATで除脂肪量の割合が話題になったことから、運動と組み合わせた研究が増えています。
イタリアの試験は、筋トレ経験のある男性34人を8週追いました(Moro et al., 2016, Journal of Translational Medicine)。両群とも、必要なエネルギーの100%を同じ栄養配分で食べ、同じ筋トレをしました。16:8の群は13時・16時・20時に、対照群は8時・13時・20時に食べています。
8週後、16:8の群では脂肪が少し多く減り、除脂肪量や腕・太ももの筋肉の面積、最大筋力はどちらの群でも保たれました。ただし16:8の群では、テストステロンなどのホルモンも下がっています。対象は若く鍛えた男性で、ダイエットを考える一般の大人とは条件がかなり違います。
運動をしている人の試験をまとめた分析もあります(Hays et al., 2025, International Journal of Obesity)。15研究・338人をまとめた結果、時間制限食は脂肪量を小さく減らしました。効果量は−0.20(−0.28〜−0.13)で、「小さい」と読む大きさです。次に同じ研究をしたときに出そうな幅(予測区間)は−0.48〜0.08で、0をまたぎます。除脂肪量には、はっきりした変化がありませんでした。
ここから言えるのは、断食をするなら、筋トレとたんぱく質をセットにするほうが安全側だということです。断食で筋肉が増えるわけではありません。筋トレの量の目安は筋トレは週何回が正解かに、年齢と筋肉の話は筋トレと加齢にまとめました。
向かない人と、受診・相談の目安
断食は「食べないだけ」なので安全そうに見えますが、向かない人がはっきりいます。オーストラリア栄養士会は、一般向けの解説で次のように書いています(Dietitians Australia, 2022)。
- やせている人、摂食障害の既往がある人は、専門職の管理なしでは向かない。
- 思春期の子どもには適さない。
- 糖尿病の薬を使っている人は、医師に相談せずに始めない。
- 妊娠中・授乳中は行わない。
- がんの治療中の人は、始める前に治療チームに相談する。
同じ解説は、主な副作用は空腹で、力が入らない感じや頭が働きにくい感じが出ることもある、としています。日常生活に差し支える不調が続くなら、やめて専門職に相談するよう勧めています。
糖尿病の薬を使っている人
ニュージーランドの試験では、薬で治療中の2型糖尿病の41人に、週2日の断食をしてもらいました(Corley et al., 2018, Diabetic Medicine)。断食日は1日2092〜2510kJです。事前に薬を減らしていたにもかかわらず、断食によって低血糖の頻度は約2倍(率の比2.05、1.17〜3.52)になりました。
著者らは、教育と薬の調整があったので低血糖は予想より少なかった、とも書いています。逆に言えば、自己判断で薬をそのままに断食するのは危険です。インスリンや血糖を下げる飲み薬を使っている方は、始める前に必ず主治医に相談してください。
食べることへのこだわりが強くなりやすい人
中国の成人491人(平均30.33歳)を8か月追った観察研究があります(He et al., 2025, International Journal of Eating Disorders)。断食をしている・していた人は、していない人より、8か月後に摂食障害の傾向を示す点数が高くなっていました。
観察研究なので、断食が原因とは言えません。もともと体型や食べ物へのこだわりが強い人が断食を選んでいる可能性もあります。それでも、食事を「我慢の時間」と「解放の時間」に分ける食べ方が、合わない人がいることは確かでしょう。
受診・相談を考える目安
・糖尿病、高血圧などで薬を飲んでいる(特にインスリンや血糖を下げる薬)。
・がんの治療中である。
・断食中に冷や汗、手の震え、動悸、強いふらつきが出た。
・食べる時間になると止まらなくなる、食べたあとに強い罪悪感がある、吐きたくなる。
・月経が止まった、急に体重が落ち続ける。
・妊娠中・授乳中、成長期の子ども、高齢で体重や筋力が落ちてきている。
当てはまる場合は、内科や主治医、摂食障害が疑われるときは心療内科・精神科に相談してください。
日本の読者に当てはめるときの限界
ここまでの試験の多くは、米国・欧州・中国の、BMI 30前後以上の肥満の人が対象でした。日本で「ちょっと痩せたい」と考える人とは、体格がかなり違います。
日本人を対象にした試験もあります(Noda et al., 2026, JMIR mHealth and uHealth)。BMI 23以上35未満の成人57人を、12週の予備的な試験で2群に分けました。片方は週1日、407kcalの置き換え食で断食し、オンライン指導も受けました。
12週後の体重は、断食の群で平均0.9kg減り、対照群は0.6kg増えました。条件をそろえた差は−1.6kg(−2.5〜−0.8)です。一方、脂肪量にははっきりした差がなく、筋肉量は−1.3kg(−2.5〜−0.2)と減った可能性が示されました。断食を指示どおり続けられたのは28人中22人(79%)でした。
著者らは、筋肉量の減少を踏まえて、運動の指導を加えるなどの改善が必要だと書いています。人数も57人と少なく、結論を出せる試験ではありません。それでも、日本人でも「減ったのは脂肪より筋肉かもしれない」という同じ懸念が出たことは覚えておく価値があります。筋肉量は体組成計(電気の通りやすさで推定する方式)での推定で、TREATのエックス線の測定よりも誤差が大きい点に注意が要ります。
ほかにも、当てはめるときの限界があります。
- 期間:1年を超えて体重を追った試験はわずかです。リバウンドを含めた長い経過は分かっていません。
- 食事の中身:試験の多くは、時間以外の食事内容を細かく指示していません。日本の朝食・昼食・夕食の組み立てで同じになるとは限りません。
- 生活:夕方や夜に家族や同僚と食べる習慣があると、時間制限は守りにくくなります。睡眠が乱れると食欲も乱れます。睡眠との関係は睡眠とパフォーマンスで扱いました。
それでも試すなら——研究から言える現実的な選び方
ここまでの試験を、読者が実際に使える形にまとめます。
- 目的は「食べる量を減らすこと」と割り切る。時間を絞って減る体重の多くは、食べる量が減ったことで説明できる可能性があります(食べる量をそろえた試験では、差が消えました)。夜食や間食がやめられない人には、時間を区切るのが量を減らす助けになるかもしれません。
- たんぱく質を削らない。食べる回数が減ると、たんぱく質も減りがちです。TREATの著者らも、十分な摂取の大切さを強調しています。
- 筋トレを組み合わせる。運動と組み合わせた研究では、除脂肪量ははっきり減りませんでした。
- 続かないなら、毎日少し減らす方法に戻してよい。隔日断食では脱落が多く、5:2も毎日の制限と同じ結果でした。どちらが続くかで選んで構いません。続け方の考え方は続かない理由の切り分けにまとめました。
- 水分をとる。食べない時間帯にも水やお茶は飲めます。目安は水分補給の記事を参照してください。
体重の変化は、数日ではなく、少なくとも数週間の平均で見てください。そして、筋力や体調が落ちてきたら、それは「頑張りが足りない」サインではなく、やり方を変えるサインです。
このページの限界
- 紹介した試験の多くは、BMI 30前後以上の肥満の成人が対象です。標準体重に近い人や高齢者、子どもにそのまま当てはまるとは限りません。
- 期間はほとんどが1年以内です。断食が死亡や心臓病などを減らすかどうかを確かめた試験はありません(Allaf et al., 2021)。
- 除脂肪量は筋肉だけでなく水分なども含みます。TREAT試験の体組成は50人の小集団の結果で、群の直接比較では差がはっきりしませんでした。
- 日本人の試験は57人・12週の予備試験だけで、日本の学会や公的機関が断食に絞って出した注意文は今回取得できませんでした。向かない人の目安は、オーストラリアの栄養士会の解説によります。
- 時間帯そのものの効果については、支持する試験(8人の交差試験と、90人・14週の試験)と、食べる量をそろえて否定した試験(41人)があり、どれも小〜中規模です。今後の大きな試験で結論が変わる可能性があります。
- ここに書いたことは一般的な情報提供であり、医学的助言ではありません。持病のある方、薬を飲んでいる方は、始める前に主治医にご相談ください。
出典
- Lowe, D. A. et al. (2020). Effects of Time-Restricted Eating on Weight Loss and Other Metabolic Parameters in Women and Men With Overweight and Obesity: The TREAT Randomized Clinical Trial. JAMA Internal Medicine. doi:10.1001/jamainternmed.2020.4153
- Liu, D. et al. (2022). Calorie Restriction with or without Time-Restricted Eating in Weight Loss. New England Journal of Medicine. doi:10.1056/NEJMoa2114833
- Lin, S. et al. (2023). Time-Restricted Eating Without Calorie Counting for Weight Loss in a Racially Diverse Population: A Randomized Controlled Trial. Annals of Internal Medicine. doi:10.7326/M23-0052
- Sutton, E. F. et al. (2018). Early Time-Restricted Feeding Improves Insulin Sensitivity, Blood Pressure, and Oxidative Stress Even without Weight Loss in Men with Prediabetes. Cell Metabolism. doi:10.1016/j.cmet.2018.04.010
- Jamshed, H. et al. (2022). Effectiveness of Early Time-Restricted Eating for Weight Loss, Fat Loss, and Cardiometabolic Health in Adults With Obesity: A Randomized Clinical Trial. JAMA Internal Medicine. doi:10.1001/jamainternmed.2022.3050
- Maruthur, N. M. et al. (2024). Effect of Isocaloric, Time-Restricted Eating on Body Weight in Adults With Obesity: A Randomized Controlled Trial. Annals of Internal Medicine. doi:10.7326/M23-3132
- Trepanowski, J. F. et al. (2017). Effect of Alternate-Day Fasting on Weight Loss, Weight Maintenance, and Cardioprotection Among Metabolically Healthy Obese Adults: A Randomized Clinical Trial. JAMA Internal Medicine. doi:10.1001/jamainternmed.2017.0936
- Schübel, R. et al. (2018). Effects of intermittent and continuous calorie restriction on body weight and metabolism over 50 wk: a randomized controlled trial. American Journal of Clinical Nutrition. doi:10.1093/ajcn/nqy196
- Harvie, M. N. et al. (2011). The effects of intermittent or continuous energy restriction on weight loss and metabolic disease risk markers: a randomized trial in young overweight women. International Journal of Obesity. doi:10.1038/ijo.2010.171
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- Moro, T. et al. (2016). Effects of eight weeks of time-restricted feeding (16/8) on basal metabolism, maximal strength, body composition, inflammation, and cardiovascular risk factors in resistance-trained males. Journal of Translational Medicine. doi:10.1186/s12967-016-1044-0
- Hays, H. M. et al. (2025). Effects of time-restricted eating with exercise on body composition in adults: a systematic review and meta-analysis. International Journal of Obesity. doi:10.1038/s41366-024-01704-2
- Dietitians Australia (2022). Intermittent fasting(一般向け解説・2022年4月に栄養士が査読). Dietitians Australia: Intermittent fasting
- Corley, B. T. et al. (2018). Intermittent fasting in Type 2 diabetes mellitus and the risk of hypoglycaemia: a randomized controlled trial. Diabetic Medicine. doi:10.1111/dme.13595
- He, J. et al. (2025). Engagement in Intermittent Fasting is Prospectively Associated With Higher Body Mass Index, Higher Eating Disorder Psychopathology, and Lower Intuitive Eating in Chinese Adults. International Journal of Eating Disorders. doi:10.1002/eat.24322
- Noda, T. et al. (2026). A Brief Web-Based and Mobile Intervention of Intermittent Fasting With Meal Support for Weight Loss Among Adults With Overweight and Obesity in Japan: Pilot Randomized Controlled Trial. JMIR mHealth and uHealth. doi:10.2196/58930
さらに詳しく知りたい方へ
- 運動の消費カロリーは思ったより小さい——食事と運動、どちらで減らすかの実際。
- たんぱく質のタイミング——食べる回数を減らすときに気をつけたいこと。
- 筋トレは週何回が正解か——減量中に筋肉を守るための量の目安。
- 体重の数字の読み方——1日の中で体重はどれくらい揺れるか。
ヨガやピラティスについて、アウトカム別に一次文献を読み解いた記事をオンザショア立川店のサイトに公開しています。形態の選び方は目的別の選び方にあります。
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この記事のまとめ
- 16:8を12週行ったTREAT試験では、1日3食との体重差は0.26kgで偶然の範囲だった。
- 同じカロリー制限に時間制限を足しても、1年後の差は1.8kgで偶然の範囲。カロリー計算なしの8時間でも、毎日25%減らす方法と差はなかった。
- 食べる量をそろえた試験では、時間を絞っても減り方は同じだった。体重の差の多くは食べる量で説明できる可能性があるが、早い時間帯に食べる試験では差が出たものもある。
- 隔日断食も5:2も、個々の試験では毎日の制限と同程度。まとめた分析では隔日断食が1.3kgほど多かったが、24週以上の試験では差は見えなかった。隔日断食は脱落が38%と多く、LDLコレステロールの上昇も報告された。
- TREATでは減った体重の約65%が除脂肪量だった。日本人の予備試験でも筋肉量の減少が示唆された。筋トレとたんぱく質をセットにするほうが安全側。
- 糖尿病の薬を使う人、がんの治療中の人、摂食障害の既往、妊娠・授乳中、成長期の子どもは、自己判断で始めず主治医に相談を。
よくある質問
16時間断食はふつうのダイエットより痩せますか?
同じだけ食事を減らす方法と比べると、差ははっきりしません。139人を1年追った試験では差は1.8kgで、偶然の範囲でした(Liu et al., 2022)。
食べる時間帯そのものに効果はありますか?
食べる量をそろえた41人の試験では、時間を絞っても体重の減り方は同じでした(Maruthur et al., 2024)。一方、早い時間に食べる90人の試験では体重が2.3kg多く減り、記録上の食事量は両群で同じくらいでした(Jamshed et al., 2022)。体重を変えずに代謝の指標が良くなった8人の試験もありますが、小規模です(Sutton et al., 2018)。
断食すると筋肉が落ちますか?
TREAT試験では減った体重の約65%が除脂肪量でしたが、群の直接比較では差ははっきりしませんでした(Lowe et al., 2020)。運動と組み合わせた研究のまとめでは除脂肪量ははっきり減りませんでした(Hays et al., 2025)。
隔日断食や5:2はどうですか?
個々の試験では、毎日の制限と体重の減りは同じくらいでした。まとめた分析では隔日断食が1.3kgほど多かったものの、24週以上の試験では差は見えませんでした(Semnani-Azad et al., 2025)。隔日断食は脱落が38%と多く、LDLコレステロールの上昇も報告されています(Trepanowski et al., 2017)。
試してはいけない人はいますか?
やせている人、摂食障害の既往、思春期の子ども、妊娠・授乳中は向かず、糖尿病の薬を使う人は医師への相談、がんの治療中の人は治療チームへの相談が前提です(Dietitians Australia, 2022)。薬を減らしても低血糖は約2倍になった試験があります(Corley et al., 2018)。