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インソールで膝や足の痛みは減るのか|「足から整える」広告と偽の中敷きの試験
足の形に合わせて作り込んだ中敷きと、平らな中敷きを並べると、痛みへの働きにも大きな差がありそうに見えます。整形外科の待合室で膝をさすりながら、スマホの「足から整える」という広告に目を止める場面では、その形の違いが頼もしく映るかもしれません。ただ、作りの説明を読んで納得することと、実際に痛みが減ることの間には、試験で確かめるべき部分があります。
インソールは膝の前の痛みで短期の改善感が上回った試験がある一方、膝の内側の変形性関節症やかかとの痛みでは、平らな中敷きや偽の中敷きを上回る効果が示されていません。 痛む場所も比べる相手も違うので、「膝や足に効く」とひとまとめにすると研究の中身を取り違えます。特注品か市販品かだけでなく、何を目標に使う道具なのかを読む必要があります。
買う前には、自分の困り事を「歩くと膝の内側が痛む」「かかとの痛みを軽くしたい」などと言葉にしておくと、広告の広い表現と照合しやすくなります。見た目の精密さから離れ、痛みの評価、比較の条件、使った期間へ順に目を移すことが、期待の大きさを決める出発点になります。
インソールの効果を平らな中敷きと比べる意味
インソールは中敷きのことで、研究では足を支える目的で形を付けたものを「足底板」と呼ぶことがあります。外側を高くしたもの、土踏まずに沿わせたもの、足に合わせて特注するものなどがあり、同じ名前でも試されている形は違います。「足から整える」という表示だけでは、どの形を、どの痛みに使った結果なのかが抜け落ちます。
試験で使う偽の中敷きは、調べたい特別な形や働きを持たせず、比較のために用意する中敷きです。平らな中敷きがその役割を担うこともあり、どちらの組にも中敷きを入れる経験がある状態で比べます。何も使わない組との比較よりも、形を工夫した部分の上乗せを問いやすい設計です。「偽」という言葉は、使った人の感覚まで偽物だという意味ではありません。
たとえば、新しい中敷きを使い始めて痛みが和らいでも、その前後の変化だけでは、道具の形がどれだけ役立ったかは決まりません。時間の経過や同時に受けた治療なども、変化を読むときに考える要素になります。そこで無作為化比較試験、つまりくじ引きのような方法で組を分ける試験では、条件をそろえた別の組の変化と比較します。見るのは組どうしの差です。
広告に使用前後の感想が載っていたら、次に探すのは比較相手の説明です。平らな中敷き、別の治療、何も使わない状態のどれと比べたかで、結果が答える内容は変わります。本人が楽だと感じたことを尊重しながら、特別な形を選ぶ根拠は比較試験で読む、という順序が役立ちます。
膝の内側の変形性関節症では痛みも軟骨も差が出なかった
Bennell(2011)は、膝の内側に軽度から中等度の変形性関節症がある、50 歳以上の200 人を調べました。変形性関節症は関節に変性が起きる病気で、この試験では診察と画像で診断された人が対象です。外側を高くしたインソールと平らな中敷きに無作為に分け、12 か月使った結果、痛みの変化にも軟骨の量の変化にも有意な差はありませんでした。
Bennell(2011)の痛みの変化の群間差は-0.3 点、95%信頼区間は-1.0〜0.3 点でした。信頼区間は推定値に伴う不確かさの幅で、この幅には差がない場合も含まれ、患者にとって意味のある最小の差には届いていません。軟骨は磁気を使って体内を撮影するMRIで調べられ、主観の痛みだけでなく、関節の構造にも利益が見られなかったという結果です。
Zhang(2018)は同じ病気について、外側を高くしたインソールを調べた10 本、938 人の試験をまとめました。これはメタ分析という、複数の研究結果をまとめて計算する方法で、膝の痛みも機能も対照より有意に良くなりませんでした。対照の中敷きは試験ごとに違うため、その条件の幅も含めて読む必要があります。
Zhang(2018)にはアジアの患者の小集団で痛みが減った結果もありますが、著者は人種との関係を示す根拠はないとしています。「日本人向け」という広告にその部分だけを使うと、全体の結果から離れます。個別の試験と統合した研究の関係は、次のように整理できます。
| 研究(著者 年) | 痛みの部位と対象 | 結果の向き | 比べた中敷き・治療 | 測ったもの |
|---|---|---|---|---|
| Bennell(2011) | 膝の内側の変形性関節症 | 症状にも構造にも利益なし | 外側を高くしたものと平らなもの | 痛みと軟骨の量の変化 |
| Zhang(2018) | 膝の内側の変形性関節症 | 有意な改善なし | 外側を高くしたものと対照の中敷き | 痛みと膝の機能 |
かかとの痛みは特注品の優位も注射との差も慎重に読む
かかとの痛みを扱ったRasenberg(2018)は、20 本の研究と8 種類の足底板をまとめたメタ分析です。市販の足底板と偽の中敷きを比較した6 本では、短期の痛みの平均差は0.26、95%信頼区間は-0.09〜0.60で、有意な差はありませんでした。特注の足底板と偽の中敷き、市販品と特注品の比較でも差は見られず、特注という作り方自体が痛みの改善を保証する結果ではありません。
Rasenberg(2018)で集められた試験は、多くが質の高いものと評価されています。ただし、主に調べているのは短期の痛みで、長期の結果は限られます。選ぶ際は、足の形に合わせる工程の詳しさに加えて、その工程によって痛みや生活上の動きがどれだけ良くなったかを示す比較に目を向けます。
Whittaker(2019)は足底腱膜炎などのかかとの痛みがある、21〜72 歳の103 人を対象にしました。足底腱膜炎は足裏の腱膜という組織に関わる痛みで、この試験では土踏まずに沿った市販の足底板と、超音波で位置を確かめながら行うステロイド注射を比べています。4 週では注射が上回り、12 週では足底板が上回りましたが、どちらの差も事前に決めた「患者が実感できる差」には届きませんでした。
Whittaker(2019)の足底板が有利だった時点の調整済み平均差は8.5 点、95%信頼区間は0.2〜16.8 点です。統計的に差があることと、患者が選び方を変えるほどの差があることを分けて読む例になります。この比較の相手は注射なので、偽の中敷きに対する足底板そのものの上乗せを示す数字ではありません。広告で「注射より良い」という部分を見たら、測った時期と差の意味まで読むことが大切です。
膝の前の痛みでは短期の改善感に違いがあった
膝の前の痛みを調べたCollins(2008)は、ここまでの膝の内側の病気とは対象が異なります。膝蓋大腿部痛という、膝のお皿の周囲に痛みが出る状態と診断された、18〜40 歳の179 人が参加しました。市販の足底板、平らな中敷き、理学療法、足底板と理学療法の併用に無作為に分けた試験です。
Collins(2008)では、6 週の時点で、本人の全体的な改善の感じ方は足底板が平らな中敷きより上回りました。一方、理学療法との比較は同程度で、理学療法に足底板を加えても上乗せはありませんでした。理学療法は身体の動きなどに働きかける治療で、足底板と組み合わせれば必ず結果が良くなるという関係ではなかったのです。長期ではどの群にも改善が見られました。
この試験を読む際は、「本人の全体的な改善の感じ方」という測定項目を残しておくことが大切です。痛みのある人にとって回復を実感することは重要ですが、その評価を「関節の変形が改善した」「原因が取り除かれた」と読み替えると、測っているものが変わってしまいます。広告で「改善」という語が使われていても、何の評価が上がったのかを見れば、期待する内容が絞られます。
また、すでに治療を受けている人にとっては、道具を単独で使う比較よりも、今の治療に加える比較のほうが判断に近い場合があります。道具が役立つかを考えるときは、すでに行っていることを含めて位置づけます。持っている道具を増やすことより、現在困っている動作について、何を足すとどんな変化を期待するのかを共有するほうが、評価の目的をそろえやすくなります。
走るときのけが予防を支える根拠は狭い
痛みを減らすための使用と、まだ痛くない人がけがを防ぐための使用では、試験で数える出来事が変わります。前者では症状や動きの変化を見ますが、後者では新しくけがをした人が減ったかを追います。今ある痛みが楽になったという結果を、そのまま将来のけがの予防として使うと、問いがすり替わります。
Yeung(2011)は、強いランニングに伴う下肢の軟部組織、つまり筋肉や腱などのけがを防ぐ方法について、25 本、30,252 人の試験をまとめた系統的レビューです。系統的レビューは、あらかじめ決めた条件で研究を集めて検討する方法で、対象の多くは軍の新兵でした。この人数は予防策全体の研究の人数であり、全員がインソールを試したわけではありません。
Yeung(2011)のインソールに関する結果は、新兵146 人の1 本の試験で、特注品が中敷きなしに比べてシンスプリント、つまりすねの内側の痛みを伴う障害を減らした可能性を示すものでした。危険比は0.24、95%信頼区間は0.08〜0.69で、危険比は比較相手に対する発生の割合を表します。ただし、レビュー全体では偏りの少ない試験が乏しく、予防策を支える根拠は非常に弱いと結論されています。
市民ランナーが購入を考えるなら、大きな総人数より、自分に近い活動の人を追った試験があるかを先に見ます。軍の訓練で調べたすねの障害と、日常の走り方で起こるさまざまなけがを同じ扱いにしないことが要点です。予防を目的に選ぶときほど、「どのけがが減ったか」という結果の名前を、広告の「けがを防ぐ」という広い表現に戻さず読む必要があります。
不具合を我慢する前に使用を見直す
インソールを使う判断には、効果への期待とともに、使用中の不具合をどう扱うかも含まれます。ここまでの研究結果から、害が起こる割合や長く使った場合の安全性を一律には示せません。一般的な注意として、入れた後に痛みが強まる、今までと違う部位が痛む、当たる場所に皮膚の傷が生じるときは、そのまま使い続けず使用を見直します。
「慣れればよい」という説明を受けても、痛みの変化をすべて慣れの途中として処理すると、中止の判断が遅れます。試す前に、どんな不具合が出たら外すのか、調整が必要になったとき誰に状態を伝えるのかを決めておきます。新しい痛みが出た状態を、効果が出始めた証拠として受け止める必要はありません。
膝が腫れて熱をもつ、夜も痛む、体重をかけられない痛みがあるときは、中敷きを替える前に整形外科を受診します。そうした状態で、製品を替えながら痛みの原因を探し続けることは避けます。病名がまだわからない人は、広告に書かれた対象と自分を合わせるために自己判断で病名を付けず、まず症状の経過を伝えることを優先します。
治療を受けている場合は、インソールを使うことで何を変えたいのかを、今の治療の目的と合わせて考えます。歩くときの痛みを減らしたいのか、日常の動作を楽にしたいのかが定まれば、使った後の報告も明確になります。購入したという理由だけで継続を決めず、役立った点と不具合を同じ記録に残すと、次の判断につながります。
買う前に比較の条件と見直し方を決める
購入前の説明では、形の特徴から結果へと順に確認します。外側を高くする設計なのか、土踏まずに沿わせるものなのか、特注する理由は何かを聞いたうえで、自分が困っている部位の痛みを調べた研究に結びついているかを見ます。形の説明が詳しくても、痛みを測った比較が示されていなければ、形に関する説明として受け取ります。
次に、効果の説明がどの比較に基づくかをたどります。別の治療に上乗せする話なのか、中敷きだけを替える話なのかが曖昧なままでは、手元の生活に置き換えにくくなります。説明を聞く際は、現在受けている治療と、すでに使っている中敷きのことも伝えると、比較の出発点をそろえやすくなります。
試すことになったら、買う前から困っていた動作を記録の中心に置きます。「今日は調子がよい」という全体の感想に加え、いつもの道を歩くときの痛み、途中で休む必要があったかなど、生活の中の変化を残します。活動の量やほかの治療を同時に変えた場合は、その変更も添えておくと、インソールを入れた時期との関係が読みやすくなります。
調整後に再び評価する時期や、役立たなかった場合の見直し方も、使用を始める段階で相談しておきます。特注品という名称や足の測定結果だけを継続の理由にせず、使う目的に沿った変化を確かめます。痛みのために提案されたインソールを試す際は、無理に活動を増やさず、合意した使い方の範囲で日常の動作と不具合を記録しながら履き比べます。
よくある質問
足の測定画像が詳しければ効果を期待してよいか
測定画像については、写っているのが足の形なのか、立ったときの状態なのか、その測定をどの調整に使うのかを説明してもらいます。続いて、調整後の評価を同じ画像で行うのか、痛みや困っている動作で行うのかを確認します。購入前後の画像を並べる説明だけで終わらず、自分が求める変化をどう確かめるかまで共有しておくと、見た目の変化と生活での手応えを混同しにくくなります。
家族が楽になった中敷きを同じように選んでよいか
家族の感想は、どんな場面で使ったか、使いにくさがなかったかを知る材料になります。その際は「楽になった」という部分だけでなく、痛かった場所や受けていた治療、同時に変えた生活のことも聞くと、自分との違いが見えてきます。家族の品を基準に先に形を決めるより、自分の困り事を説明してから候補を選ぶと、感想を参考にしつつ、自分が試す目的を保てます。
受診時には使っているインソールを持っていくべきか
持参については受診先に確認し、使っている品の形や調整内容が伝わるようにしておくと、説明を共有しやすくなります。広告の画像だけでなく、使い始めた時期、入れる前からあった症状、使用後に変わった感覚を分けてメモしておきます。中敷きの名称を覚えることより、使用前後の経過を順に伝えるほうが、続けるか調整するかを話し合う材料になります。
この記事の限界
対象は、膝の内側の変形性関節症、膝の前の痛み、かかとの痛み、軍の新兵とわかれており、同じインソールを幅広い成人に使った研究ではありません。病気ごとの比較を読むための解説であり、個人の足に合う形や治療を指示するものではありません。日本の生活環境で使う人への効果や、症状の経過に応じた選び方については、ここで扱った試験だけでは十分に答えられません。
研究の測定には本人の改善感と痛みの点数、関節の画像があり、短期の感じ方と長く続く変化では得られる情報も異なります。かかとの痛みを長く追う試験が限られるため、症状や足の特徴に応じて中敷きの形を選び分ける確かな基準を、今回の結果だけで示すことはできません。
参考文献
- Bennell KL. Lateral wedge insoles for medial knee osteoarthritis: 12 month randomised controlled trial. BMJ. 2011;342:d2912.
- Zhang J. Ineffectiveness of lateral-wedge insoles on the improvement of pain and function for medial knee osteoarthritis: a meta-analysis of controlled randomized trials. Arch Orthop Trauma Surg. 2018;138(10):1453-1462.
- Rasenberg N. Efficacy of foot orthoses for the treatment of plantar heel pain: a systematic review and meta-analysis. Br J Sports Med. 2018;52(16):1040-1046.
- Whittaker GA. Effectiveness of Foot Orthoses Versus Corticosteroid Injection for Plantar Heel Pain: The SOOTHE Randomized Clinical Trial. J Orthop Sports Phys Ther. 2019;49(7):491-500.
- Collins N. Foot orthoses and physiotherapy in the treatment of patellofemoral pain syndrome: randomised clinical trial. BMJ. 2008;337:a1735.
- Yeung SS. Interventions for preventing lower limb soft-tissue running injuries. Cochrane Database Syst Rev. 2011;(7):CD001256.
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よくある質問
足の測定画像が詳しければ効果を期待してよいか
測定画像については、写っているのが足の形なのか、立ったときの状態なのか、その測定をどの調整に使うのかを説明してもらいます。続いて、調整後の評価を同じ画像で行うのか、痛みや困っている動作で行うのかを確認します。購入前後の画像を並べる説明だけで終わらず、自分が求める変化をどう確かめるかまで共有しておくと、見た目の変化と生活での手応えを混同しにくくなります。
家族が楽になった中敷きを同じように選んでよいか
家族の感想は、どんな場面で使ったか、使いにくさがなかったかを知る材料になります。その際は「楽になった」という部分だけでなく、痛かった場所や受けていた治療、同時に変えた生活のことも聞くと、自分との違いが見えてきます。家族の品を基準に先に形を決めるより、自分の困り事を説明してから候補を選ぶと、感想を参考にしつつ、自分が試す目的を保てます。
受診時には使っているインソールを持っていくべきか
持参については受診先に確認し、使っている品の形や調整内容が伝わるようにしておくと、説明を共有しやすくなります。広告の画像だけでなく、使い始めた時期、入れる前からあった症状、使用後に変わった感覚を分けてメモしておきます。中敷きの名称を覚えることより、使用前後の経過を順に伝えるほうが、続けるか調整するかを話し合う材料になります。