立川の美容・健康・ダイエット情報ガイド数字と広告表現を、宣伝抜きで読み解く

公開:2026年10月3日/最終更新:2026年10月3日

EMS・痩身機器の広告と研究——「巻くだけ」で何が起きるか

お腹に巻くだけ、貼るだけで引き締まる——EMSの広告はそう語ります。研究と行政処分の原典を読むと、鍛えられるのは筋肉で、脂肪が減る根拠は弱いことが見えてきます。

この記事の要点
  • EMSは筋肉を電気で縮ませる機器。消費者安全調査委員会は「脂肪を直接減らす効果は期待できない」と説明している。
  • お腹と手足にEMSをかけ、偽の刺激と比べた27人の試験では、体重・体脂肪・見た目に差が無かった。別の試験では筋力58%増・ウエスト3.5cm減でも、体重と皮下脂肪は変わらなかった。
  • 全身EMSのまとめは、筋肉量と筋力には効果。体脂肪は2021年のまとめ(体脂肪は10研究)で有意差なし、2023年のまとめ(同17研究)で小さく減少と割れている。
  • 消費者庁は2020年、EMS機器4社7商品の「驚きのマイナス14.4センチ」などの表示に措置命令、2021年に課徴金517万円・3,332万円を命じた。注記は印象を打ち消さないと判断。
  • 医療機器としてのEMSの目的は鎮痛・筋萎縮の改善。米国で電気・電磁場の筋刺激だけの機器の適応も腹筋の張り・強化だった。
  • 水ぶくれ、首に使う機器での失神、ペースメーカーとの干渉、全身EMS初回の横紋筋融解に注意。赤茶色〜コーラ色の尿やむくみは受診の目安。

このページで分かること

  • EMS(電気で筋肉を縮ませる機器)で鍛えられるのは筋肉で、脂肪を直接減らす仕組みは無いこと。
  • お腹と手足に EMS をかけた試験では、偽の刺激と比べると体重・体脂肪・見た目に差が無かったこと。腹部ベルトの試験では、筋力とウエスト周径は変わったが体重と皮下脂肪は変わらなかったこと。
  • 全身に電極を付けるスタジオ型 EMS の研究では、筋肉には効くが、脂肪は「減った」と「差が無い」で割れていること。
  • 「巻くだけで腹筋」「マイナス14.4センチ」と並べた広告に、消費者庁が措置命令と課徴金を出した理由。
  • 水ぶくれ(皮膚の傷)・ペースメーカー・横紋筋融解など、使う前に知っておきたい害と、受診の目安。

EMSは何をしている機械か——動くのは筋肉、脂肪は電気を通しにくい

EMS は英語の Electrical Muscle Stimulation の頭文字です。皮膚に貼った電極から電気を流し、その下の筋肉を縮ませます。自分で力を入れなくても筋肉がピクピク動くので、「運動した」感覚が得られます。

では、脂肪には何が起きるのでしょうか。国の消費者安全調査委員会は、EMS の仕組みをこう説明しています。「電気を通さない性質を持つ脂肪にはほとんど働きかけないので、脂肪を直接減らす効果は期待できない」(消費者安全調査委員会, 2024)。広告の言い分と研究を比べる前に、まずこの一文を押さえておくと話が分かりやすくなります。

医療の世界でも、EMS は昔から使われてきました。日本で医療機器として認証を受ける「低周波治療器」の基準には、EMS も含まれています。その使用目的は「経皮的に鎮痛及び筋萎縮改善に用いられる神経及び筋刺激を行うこと」です(厚生労働省, 2005)。痛みを和らげることと、衰えた筋肉を保つことが目的で、痩せることは書かれていません。

ここから分かるのは、EMS に期待できる中心は「筋肉への刺激」だということです。脂肪が減るとしたら、筋肉を動かしたことによる間接的な結果になります。その間接的な効果がどれくらいあるのかを、次の節から研究で見ていきます。

お腹と手足に EMS をかけた試験と、腹部ベルトの試験

広告の主張をそのまま試した実験があります。米国の大学の研究チームによる試験です(Porcari et al., 2002, Journal of Strength and Conditioning Research)。論文は冒頭で、EMS 機器が「筋力を上げ、体重と体脂肪を減らし、筋肉を引き締める」と宣伝されていると書き、その主張を確かめると宣言しています。

対象は大学生年齢の志願者27人です。16人がメーカーの推奨どおり週3回 EMS を使い、11人は電気が実際には効かない「偽の刺激」を同じ時間受けました。腹部・腕・太ももを刺激し、体重、皮下脂肪の厚み、周径、筋力、写真による見た目を前後で比べています。

結果は、測ったどの項目にも EMS の効果は見られませんでした。著者らは、健康な人に対する EMS の効果の主張は、この研究の結果からは支持されないと結論しています。27人と小さな試験ですが、「偽の刺激」と比べた点が大事です。使う人は「効いているはず」と思いながら使うので、その期待の分を差し引ける設計になっています。

同じ研究室は3年後、腹部専用のベルトで別の試験をしています(Porcari et al., 2005, Journal of Sports Science and Medicine)。25〜50歳、BMI 18〜30 の41人を2つに分けました。刺激群の24人は、8週間、週5日、1回20〜40分お腹に EMS をかけ、ほかの運動はしません。対照群の16人は何もしません。

測ったこと刺激群(24人)対照群(16人)
腹筋の筋力58%増変化なし
腹筋の持久力(上体起こし)100%増28%増
ウエスト周径3.5cm減(表では 96.7cm → 93.1cm)有意な変化なし
体重・BMI・皮下脂肪の厚みどちらの群も有意な変化なし

筋力は上がり、ウエストも細くなりました。それなのに体重も皮下脂肪も変わっていません。著者らは、腹筋が強くなると「ガードルのように」お腹を引き込み、周径が小さくなりうると説明しています。脂肪が減ったのではなく、お腹の締まり方が変わった、という解釈です。

この試験には、読むときに注意したい点が3つあります。1つ目は、対照群が偽の刺激を受けず、何もしていないことです。2つ目は、刺激群の24人全員が「お腹が引き締まった」と答えていますが、これは本人の感じ方です。3つ目は、研究の資金とベルトをメーカーが提供していたことです(謝辞に明記)。刺激群には参加の謝礼100ドルも払われていました。

2つの試験を並べると、こう読めます。EMS で腹筋は強くなりうるが、脂肪や体重を減らす根拠にはならない。「ウエストが何cm減った」という数字が出ても、それが脂肪の減少とは限らない、ということです。

全身EMSのまとめ——筋肉には効くが、脂肪は結論が割れている

家庭用のベルトとは別に、全身に電極付きのスーツを着て、トレーナーの指導のもとで動く「全身 EMS」があります。こちらは研究の数が多く、まとめた論文(メタ分析)も出ています。ただし、2つの代表的なまとめで、脂肪についての結論が食い違っています。

1つ目は、ドイツの研究グループによる2021年のまとめです(Kemmler et al., 2021, Frontiers in Physiology)。スポーツ選手ではない成人を対象にした16研究、合わせて897人を集めています。週1〜5回、期間は6〜54週と、研究ごとにばらばらです。

結果は、筋肉量で効果量 1.23、脚の筋力で 0.98 でした。効果量は「どれだけ差が出たか」を研究間でそろえて比べる物差しで、著者ら自身が「大きい効果」と書いています。一方、体脂肪を測った10研究をまとめると、効果量は −0.40 で、偶然とは言い切れない差(統計的に有意)には届きませんでした。研究ごとの結果のばらつきも大きいと書かれています。著者らの結論は「筋肉量と筋力には大きな効果、体脂肪には効果が示されなかった」です。

2つ目は、スペインの研究グループによる2023年のまとめです(Rodrigues-Santana et al., 2023, Medicine)。2021年7月までの26研究、合わせて1,183人と、対象を広げています。参加者の平均年齢は研究によって20.4歳から77.4歳まで、期間は4〜54週でした。

こちらでは、体脂肪を測った17研究をまとめると、効果量は −0.38 で、統計的に有意でした(P = 0.003)。筋肉量の効果量は 0.36 です。ただし、体脂肪の信頼区間(結果の幅)は論文の表記が不明瞭で、上限が確かめられませんでした。そのため、このページでは幅の数字を書いていません。

著者ら自身も、この結果が2021年のまとめと食い違うと書いています。理由として、含めた研究の数や対象の違いを挙げました。そして「脂肪を減らす目的で全身 EMS を使う科学的根拠を決めるには、質の高い研究がまだ必要」と結んでいます。含まれた試験の中には、食事を1日250〜500kcal減らす試験や、たんぱく質を補う試験も混ざっています。

2つのまとめを読み比べると、こう言えます。筋肉には効く、という点はどちらも一致しています。脂肪は「少し減る」と「差が無い」で割れています。減ったとしても、筋肉への効果と同じか、それより小さい程度です。そして、ここで調べられたのは、トレーナーがつき、全身の筋肉を同時に強く動かす方式です。家庭用の腹部ベルトに、そのまま当てはめることはできません。

「お腹に巻けばお腹がへこむ」は、部分痩せの話になる

EMS ベルトの広告の多くは、「お腹に巻いて、お腹を引き締める」という形をとります。これは、鍛えた場所の脂肪が先に落ちるという「部分痩せ」を前提にした言い方です。

部分痩せは、運動の研究ではまだ決着していません。片側の手足だけを鍛えて反対側と比べた13研究、1,158人のまとめでは、鍛えた側の脂肪が多く減るという結果は出ませんでした(Ramírez-Campillo et al., 2022, Human Movement)。まとめた効果量は −0.03 で、ほぼゼロです。一方で、肯定的な小さな試験もあります。詳しい読み比べは運動の消費カロリーは思ったより小さいの部分痩せの節にまとめました。

自分の意思で筋肉を動かす運動でさえ、こうした状況です。電気で腹筋だけを縮ませて、お腹の脂肪だけを狙って落とせる、という根拠は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。

消費者庁は、どんな広告を問題にしたのか

2020年3月31日、消費者庁は EMS 機器の販売事業者4社に、景品表示法にもとづく措置命令を出しました(消費者庁, 2020)。対象は7商品です。「実際よりも著しく良いと思わせる表示」(優良誤認)にあたると判断されました。

問題とされた表示は、たとえば次のようなものです。

  • 「102.4センチあったウエストはなんと88センチに。驚きのマイナス14.4センチ」
  • 特段の食事制限や運動をせず、1日20分の使用を4週間続けるだけで、お腹が痩せるかのような表示
  • 使用前と使用後の写真を並べ、「30日間でこの変化!」とする表示

消費者庁は各社に、表示の裏付けとなる合理的な根拠の資料を出すよう求めました。資料は出されましたが、いずれも根拠とは認められませんでした。効果をうたう表示について根拠を示せないと、不当な表示とみなされる仕組みです。詳しくは広告表現の読み方で扱っています。

見落とされやすいのが、画面の隅の小さな注記です。この件では「※適切な栄養管理も行った結果です」といった注記が付いていました。消費者庁は、こうした注記は見た人が受ける効果の印象を打ち消すものではないと判断しています(消費者庁, 2020)。

翌2021年には、課徴金の納付命令も出ました。腹部ベルトのテレビ通販の表示には517万円です(消費者庁, 2021a)。その表示には「巻くだけで腹筋」「激しい運動ナシ!」「過激な食事制限ナシ!」「巻くだけでお腹が引き締まる!」といった言葉が並んでいました。別の会社の EMS 機器2商品には、合わせて3,332万円の課徴金です(消費者庁, 2021b)。「ウエスト−18cmサイズダウン!」といった表示に、「※適度な運動と食事制限を行った結果です」という注記が添えられていました。

ここで1つ、言い過ぎないようにしておきます。措置命令は「表示を裏付ける根拠が無い」という判断です。「EMS には一切効果が無い」と科学的に判定したものではありません。研究で見たとおり、筋力が上がる可能性はあります。問題は、それを「巻くだけで腹筋」「驚きのマイナス14.4センチ」と、脂肪が落ちるかのように言い換えたところにあります。使用前と使用後の写真の見え方については、ビフォーアフター写真は何をしているのかも参考になります。

医療機器なら痩せるのか——認められた中身を読む

「医療機器の技術」「医療用と同じ」とうたう広告もあります。では、医療機器としての EMS は、何をする機器として認められているのでしょうか。

日本では、EMS を含む低周波治療器は「管理医療機器(クラスⅡ)」に分類されます。認証の基準にある使用目的は、先ほど見たとおり「鎮痛」と「筋萎縮の改善」です(厚生労働省, 2005)。医療機器であることは、その目的について一定の基準を満たしているという意味です。痩せる効果を保証するものではありません。

米国でも同じ構図です。米国食品医薬品局(FDA)が販売を認めた腹部 EMS ベルトの適応は、「腹筋の張りの改善、腹筋の強化、より引き締まったお腹」でした(FDA, 2003)。健康な人が使う機器として認められていますが、脂肪や体重を減らすことは適応に入っていません。2003年のこの判断は、既に売られている機器と同じ種類だと認めるもので、効果を新しく試験して確かめたものではありません。

電気ではなく、電磁場で筋肉を収縮させる機器も調べました。2018年に販売が認められた機器の適応は、「腹部の張りの改善と腹筋の強化」「臀部と太ももの強化・引き締め」です(FDA, 2018)。こちらも筋肉の話で、脂肪を減らす適応ではありません。

一方、同じ会社がその後に販売の認可を得た、ラジオ波(RF)の加熱と電磁場の刺激を組み合わせた機器には、「腹部の脂肪の分解」と「腹囲の減少」の適応が付いています(FDA, 2019)。比べられた既存の機器はラジオ波と吸引の機器で、脂肪に働くとされたのは加熱の部分です。

つまり、「医療機器だから」「承認済みだから」という言葉は、何について認められたのかまで読まないと意味を持ちません。広告に「承認」「認証」と書いてあれば、使用目的の欄を確かめてみてください。

家庭用EMSで起きている事故——水ぶくれ(皮膚の傷)・失神・ペースメーカー

家庭用 EMS には、害の報告もあります。代表的なものを3つ挙げます。

1つ目は皮膚の傷です。国民生活センターは、「EMS 機器を使ったら腹部に水膨れができた」という相談で、製品を調べています(国民生活センター, 2017)。動作中の温度はほとんど上がっていませんでした。代わりに見つかったのは、絶縁のコーティングの小さな傷です。そこに皮膚が触れたり汗が流れ込んだりすると、電流が一点に集中して強い刺激になり、痛みや傷の原因になりうると報告されています。熱によるやけどではなく、電気の集中が原因になりうる、ということです。

2つ目は、首に使う機器での失神です。消費者安全調査委員会は、首の両側に挟むヘッドホン型の EMS 美顔器を使った人が、動かして10秒ほどでめまいを起こして倒れ、吐き気を催した事例を受けて情報を集めました(消費者安全調査委員会, 2024)。首には自律神経が走っており、刺激や圧迫で血圧が下がって失神する「反射性失神」が起きうると説明しています。首付近に押し当てない、寝不足や飲酒の後は使わない、具合が悪いと感じたらすぐやめて横になる、が勧められています。

3つ目は、体に埋め込む医療機器との干渉です。ペースメーカーや植込み型除細動器(ICD)を使っている人に向けた業界団体の注意書きは、「筋力増強用の電気機器(EMS)」を使わないよう求めています(日本不整脈デバイス工業会, 2013)。機器の作動に影響し、失神などを起こすことがあるためです。先ほどの腹部 EMS の試験でも、ペースメーカーを入れている人や妊娠中の人は、最初から対象から外されていました(Porcari et al., 2005)。

ペースメーカーや植込み型除細動器を使っている方は、注意書きのとおり使わないでください。妊娠中の方、心臓の病気や持病のある方は、使う前に主治医に相談してください。使った後に、パッドの部分の水ぶくれ・ただれ・強い痛みが出たら、使用をやめて皮膚科に相談してください。めまいや動悸が出たら、すぐに使うのをやめて横になってください。おさまらないときは内科(ペースメーカーの方は主治医)に連絡してください。意識を失った、胸が痛い、息が苦しいときは救急車を呼んでください。

スタジオの全身EMSで起きること——初回の強い刺激と横紋筋融解

全身 EMS は、全身の大きな筋肉を同時に、強く縮ませることができます。それが効果の源ですが、やり過ぎると筋肉が壊れる「横紋筋融解」につながります。壊れた筋肉の成分が血液に出て、重い場合は腎臓に負担がかかる状態です。

ドイツの研究では、全身 EMS が初めての健康で運動習慣のある26人に、初回から20分の強い刺激をかけました(Kemmler et al., 2015, Wiener Medizinische Wochenschrift)。筋肉が壊れると血液中に増える酵素(CK)は、平均で元の値の117倍に上がりました。ピークは72〜96時間後です。この研究では腎臓の障害などの合併症は出ませんでした。週1回を10週間続けた後に同じ強さで行うと、上がり方は大きく弱まっていました。

2024年の小さな研究でも、12人に1回20分の強い全身 EMS を行うと、CK は72時間後にピークになりました(Teschler et al., 2024, Frontiers in Sports and Active Living)。上がり方には大きな個人差があり、同じ刺激でも反応の速い人と遅い人に分かれました。

重い例の報告もあります。腎臓の病気と慢性の痛みの持病がある46歳のプロ選手が、初めての全身 EMS を最大の強さで1時間受けました。途中で不快を訴えましたが、トレーナーはそのまま続けさせました。その後、横紋筋融解と、臀部の筋肉が腫れて圧迫される症状を起こし、点滴による治療を受けました(von Deneen et al., 2024, Clinical Journal of Sport Medicine)。症例報告なので、どれくらいの頻度で起きるかは分かりません。

こうした報告を受けて、研究者グループは2023年に安全の指針をまとめています(Kemmler et al., 2023, Frontiers in Physiology)。初心者の強すぎる初回で、CK が元の1000倍に達した報告にも触れています。主な内容は次のとおりです。

  • 最初の8〜10週は強い刺激を避け、週1回20分までにする。
  • その後も、強いセッションの間は少なくとも4日空ける。
  • 始める前に持病などの禁忌を問診し、記録する。
  • 飲酒や強い疲れは24〜48時間前から避け、熱があるときは行わない。
  • トレーニングの30分前と直後に水分を250〜500ml とる。

同じ指針は、コーラのような色の尿や、続く頭痛が出たら医療機関に相談するよう求めています。全身 EMS の数日後に、強い筋肉痛に加えて尿が赤茶色やコーラのような色になったり、むくみや尿の量の減少があったりしたら、すぐに内科か救急を受診してください。「筋肉痛だから」と様子を見ない方がよい場面です。

広告を見たときに、確かめたいこと

ここまでの内容を、広告を見たときの確かめ方にまとめます。

  • 「何cm減った」は、脂肪の話か。周径は腹筋の締まり方でも変わります。体重や体脂肪も一緒に示されているかを見てください。
  • 比べた相手はいるか。偽の刺激と比べた試験では、差が出ませんでした。使った人の感想だけでは判断できません。
  • 食事制限や運動を一緒にしていないか。小さな注記に「食事管理を行った結果です」とあれば、その変化は機器だけのものではありません。
  • 「承認」「医療用」は何について認められたのか。筋肉の強化や痛みの緩和なのか、加熱など別の仕組みによるものなのかを見てください。
  • 自分に使ってよい体か。ペースメーカーや ICD の方は使わない。妊娠中や持病のある方は、先に医師に確認してください。

腹筋を強くしたい、寝たきりなどで筋肉を落としたくない、という目的なら、EMS が役に立つ場面はあります。一方、体脂肪を減らしたいなら、研究で確かめられているのは食事と体全体の活動量です。運動と食事の効果の大きさは運動の消費カロリーは思ったより小さいに、体組成計の数字の読み方は体組成計の数字はどこまで当てにできるかにまとめました。

このページの限界

  • 2002年と2005年の試験は、どちらも小さく古い研究です。2002年の試験は27人、2005年の試験は40人の解析で、どちらも米国の成人です。いまの日本で売られている機種で同じ結果になるとは限りません。
  • 2005年の試験は、対照群に偽の刺激が無く、メーカーの資金で行われました。筋力の変化は測定値ですが、「引き締まった」は本人の感じ方です。
  • 全身 EMS のまとめは、脂肪について結論が割れています。含まれた研究には高齢者、肥満の人、食事制限やたんぱく質補給を組み合わせた試験が混ざっています。2023年のまとめの信頼区間は表記が不明瞭で、確かめられませんでした。
  • 横紋筋融解の頻度は分かりません。ここで挙げたのは小さな研究と症例報告です。家庭用ベルトで同じことが起きるかは調べていません。
  • キャビテーション(超音波)やラジオ波など、ほかの痩身機器は扱っていません。今回の検索で、確かめられる質の高いまとめを見つけられなかったためです。
  • 医療機器の承認・認証は、すべてを調べたわけではありません。低周波治療器の基準と、米国の3件の判断書を読んだ範囲での話です。
  • ここに書いたことは一般的な情報で、医学的な助言ではありません。体に不安のある方は主治医に相談してください。

出典

  • Porcari, J. P. et al. (2002). Effects of Electrical Muscle Stimulation on Body Composition, Muscle Strength, and Physical Appearance. Journal of Strength and Conditioning Research. doi:10.1519/1533-4287(2002)016<0165:eoemso>2.0.co;2
  • Porcari, J. P. et al. (2005). The effects of neuromuscular electrical stimulation training on abdominal strength, endurance, and selected anthropometric measures. Journal of Sports Science and Medicine. PMC3880086
  • Kemmler, W. et al. (2021). Efficacy of Whole-Body Electromyostimulation (WB-EMS) on Body Composition and Muscle Strength in Non-athletic Adults. A Systematic Review and Meta-Analysis. Frontiers in Physiology. doi:10.3389/fphys.2021.640657
  • Rodrigues-Santana, L. et al. (2023). The effects of whole-body muscle stimulation on body composition and strength parameters: A PRISMA systematic review and meta-analysis. Medicine. doi:10.1097/md.0000000000032668
  • Ramírez-Campillo, R. et al. (2022). A proposed model to test the hypothesis of exercise-induced localized fat reduction (spot reduction), including a systematic review with meta-analysis. Human Movement. doi:10.5114/hm.2022.110373
  • Kemmler, W. et al. (2015). Hohe Kreatinkinase-Werte nach exzessiver Ganzkörper-Elektromyostimulation: gesundheitliche Relevanz und Entwicklung im Trainingsverlauf. Wiener Medizinische Wochenschrift. doi:10.1007/s10354-015-0394-1
  • Teschler, M. et al. (2024). Inter-individual differences in muscle damage following a single bout of high-intense whole-body electromyostimulation. Frontiers in Sports and Active Living. doi:10.3389/fspor.2024.1454630
  • von Deneen, K. M. et al. (2024). Acute Compartment Syndrome and Rhabdomyolysis Caused by a Single Electrical Muscle Stimulation in a 46-Year-Old Female Professional Athlete With Fibromyalgia, Chronic Fatigue Syndrome, and Myofascial Disorder: A Case Report. Clinical Journal of Sport Medicine. doi:10.1097/jsm.0000000000001216
  • Kemmler, W. et al. (2023). Position statement and updated international guideline for safe and effective whole-body electromyostimulation training—the need for common sense in WB-EMS application. Frontiers in Physiology. doi:10.3389/fphys.2023.1174103
  • 消費者庁 (2020). EMS機器の販売事業者4社に対する景品表示法に基づく措置命令について(令和2年3月31日). 公表資料(インターネットアーカイブの保存版)
  • 消費者庁 (2021a). 株式会社オークローンマーケティングに対する景品表示法に基づく課徴金納付命令について(令和3年9月9日). 公表資料
  • 消費者庁 (2021b). 株式会社プライムダイレクトに対する景品表示法に基づく課徴金納付命令について(令和3年8月26日). 公表資料
  • 消費者安全調査委員会 (2024). 家庭用EMS美顔器に係る事故に関する情報提供(令和6年4月11日). 消費者庁 消費者安全調査委員会
  • 国民生活センター (2017). 腹部に水膨れができたEMS機器(相談解決のためのテストから No.115). 国民生活センター 発表情報
  • 日本不整脈デバイス工業会 (2013). ペースメーカ、ICDをご使用のみなさまへ こんなときにはご注意を!. 医薬品医療機器総合機構 掲載資料
  • 厚生労働省 (2005). 低周波治療器等基準(認証基準 別表3-123、厚生労働省告示第112号). 医療機器基準等情報提供ホームページ
  • FDA (2003). 510(k) K030708: Slendertone Flex Abdominal Training System. FDA 510(k) 判断書
  • FDA (2018). 510(k) K180813: BTL 799-2. FDA 510(k) 判断書
  • FDA (2019). 510(k) K192224: BTL-899. FDA 510(k) 判断書

さらに詳しく知りたい方へ

巻くだけで脂肪が落ちる機器は、研究では確かめられていません。
筋肉を動かすこと自体には意味があります。続けられる形で体を動かすことを考えるなら、続かない理由を5つに切り分ける考え方をこちらに、通う場所を生活動線から選ぶ方法を通う場所を距離で選ぶにまとめました。

ヨガやピラティスが座位中心の生活に何をもたらすのか(姿勢、腰痛、体幹)は、アウトカム別に一次文献を読み解いた記事をオンザショア立川店のサイトに公開しています。形態の選び方は目的別の選び方にあります。

このサイトと上記サイトは、いずれも株式会社エッセンが運営しています。利害関係を明示したうえで、本文では効果を断定していません。

この記事のまとめ

  • EMS は筋肉を電気で縮ませる機器。国の調査委員会は「脂肪を直接減らす効果は期待できない」と説明している。
  • お腹と手足に EMS をかけ、偽の刺激と比べた27人の試験では、体重・体脂肪・見た目に差が無かった。別の試験では筋力が58%上がりウエストも3.5cm減ったが、体重と皮下脂肪は変わらなかった。
  • 全身 EMS のまとめでは、筋肉量と筋力には効果が出た。体脂肪は「差が無い」(2021年)と「少し減る」(2023年)で割れている。
  • 消費者庁は2020年、「驚きのマイナス14.4センチ」などの表示を根拠が無いとして4社に措置命令を出し、2021年には課徴金も命じた。「食事管理も行った結果です」の注記は認められなかった。
  • 医療機器としての EMS の目的は鎮痛や筋萎縮の改善で、痩身ではない。
  • 水ぶくれ、首に使う機器での失神、ペースメーカーとの干渉、全身 EMS 初回の横紋筋融解に注意。赤茶色〜コーラ色の尿やむくみが出たらすぐ受診を。

よくある質問

EMSベルトを巻くだけでお腹の脂肪は落ちますか?

研究ではその根拠は確かめられていません。偽の刺激と比べた試験では体重・体脂肪・見た目に差が無く(Porcari et al., 2002)、国の調査委員会も「脂肪を直接減らす効果は期待できない」と説明しています(消費者安全調査委員会, 2024)。

ウエストが細くなったという試験もあるのでは?

あります。8週間の試験でウエストが3.5cm減りましたが、体重と皮下脂肪の厚みは変わりませんでした。著者は腹筋がガードルのようにお腹を引き込んだと説明しています(Porcari et al., 2005)。メーカー資金で、対照群に偽の刺激はありませんでした。

スタジオの全身EMSなら脂肪も減りますか?

結論が割れています。2021年のまとめ(体脂肪は10研究)では有意な差がなく(Kemmler et al., 2021)、2023年のまとめ(同17研究)では小さく減りました(Rodrigues-Santana et al., 2023)。筋肉量と筋力への効果はどちらでも出ています。

EMSを使ってはいけない人はいますか?

ペースメーカーや植込み型除細動器を使っている人は使わないよう注意書きがあります(日本不整脈デバイス工業会, 2013)。妊娠中の方、持病のある方も使う前に主治医に相談してください。

全身EMSの後に気をつけることは?

初回の強い刺激で筋肉が壊れる横紋筋融解が報告されています(Kemmler et al., 2015)。指針は最初の8〜10週を週1回20分までとし、コーラ色の尿や続く頭痛では医療機関への相談を求めています(Kemmler et al., 2023)。