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禁煙すると太るのか|増える体重の数字と禁煙の試験

4.67 kg という禁煙後の平均体重増加には大きな個人差があり、体重が増えても心血管疾患や死亡の危険が低かった研究と、糖尿病の危険を示す研究の両方から禁煙後の変化を捉えます。

禁煙すると太るのか|増える体重の数字と禁煙の試験

16%という体重が減った人の推定割合も、禁煙後の変化をまとめたAubin(2012)の研究には含まれています。冬の朝、上着を羽織る前に体重計に乗り、増えた表示を見て禁煙を始めたことまで迷ってしまう場面があります。増加が気になるのは自然なことですが、平均の数字だけを自分の将来として受け取ると、禁煙と健康の関係を狭く見てしまいます。

禁煙後は体重が増える人が多いものの個人差が大きく、増加があっても心血管疾患や死亡の危険が低いという研究結果があるため、体重だけで禁煙の損得は決まりません。 一方で、糖尿病の危険は体重の増え方と関係しており、増加を放っておけばよいという話でもありません。必要なのは、禁煙を続けることと、体重や健診の変化に対応することを、同じ計画の中に置くことです。

「太らずに禁煙」という広告を見るときにも、体重を測った時期と、禁煙が続いたかどうかの両方に目を向けます。始めた直後の体重、長く続けた後の体重、病気の発生は、それぞれ異なる結果です。研究が答えている範囲を順にたどると、恐れておくべき変化と、数字に引きずられずに進めてよい部分を分けて読めます。

禁煙で太る人の平均と、増え方の幅

Aubin(2012)は、禁煙の治療や運動を調べた試験から、禁煙を続けた人の体重変化を集めたメタ分析です。メタ分析とは、複数の研究の結果をまとめて計算し直す方法です。ここで紹介する数字は、治療なしで禁煙した人の結果で、禁煙に取り組んだ全員のその後を表したものではありません。

Aubin(2012)によると、治療なしで禁煙した人の平均増加量は、禁煙後 1 か月で 1.12 kg、2 か月で 2.26 kg、3 か月で 2.85 kg、6 か月で 4.23 kg、12 か月で 4.67 kgでした。著者は、増加の多くが最初の 3 か月に起きるとまとめています。始めの時期に体重が増えたからといって、その速さのままずっと増え続けると読む数字ではありません。

Aubin(2012)の 12 か月の平均値に付く 95% 信頼区間は 3.96〜5.38 kgでした。信頼区間は、集団の平均についての推定の幅を表し、個人の体重増加が収まる範囲を表すものではありません。平均の前後に狭い範囲が書かれていても、自分の増加量の上限や下限として使うと意味が変わります。広告で小さな注記を読むときには、何についての幅なのかまで確かめます。

個人差を示す別の手掛かりとして、Aubin(2012)は 12 か月で 10 kgを超えて増える人の割合を 13%と推定しました。これは平均と、ばらつきを示す標準偏差を使って算出した割合です。増加の小さい人も大きい人もいる分布を、平均だけで置き換えないことが大切です。

また、この分析は、禁煙を続けられた人を選んで体重を見ています。途中で喫煙に戻った人を含む集団の平均とは、数字の意味が違います。広告に平均増加量が載っていたら、見出しの大きさより、対象が禁煙継続者なのか、禁煙に取り組んだ参加者全体なのかを先に読みます。自分の体重を平均に近づけるのではなく、禁煙を始めた時点からの経過をつかむために使う数字です。

長い期間の増加は、以前の本数や体格とも関係する

Veldheer(2015)は米国の全国調査を使い、36 歳以上の 12,204 人について、過去 10 年の体重変化と喫煙状況を調べました。平均の体重増加は、吸い続けた人で 3.5 kg、やめた人で 8.4 kgで、著者は禁煙に関連する増加分を 4.9 kgと見積もっています。吸い続けた人にも体重の増加がある点が、この比較を読むうえで重要です。

Veldheer(2015)の結果で、やめた人の増加量全体を、そのまま禁煙だけの影響とすると、比較相手にも起きた変化を含めてしまいます。禁煙後に増えた体重という記述と、喫煙を続けた場合との差という記述では、数字が答えている問いが異なります。長くたってからの体重を扱う説明ほど、禁煙前後の差だけを見ているのか、吸い続けた人とも比べているのかを確認する必要があります。

Veldheer(2015)は、禁煙前の本数と体格によっても増加の大きさが異なるとしました。喫煙が 1 日 15 本未満だった人では禁煙に関連する増加が小さく、1 日 25 本以上だった人や、やめる前から肥満だった人では大きくなっていました。体格の指標には、身長に対する体重の大きさを表すBMIが使われています。本数やもとの体格を抜かしたまま、大きく増えた人の数字を全員向けに示す説明には注意が要ります。

この調査の弱さは、過去の体重と喫煙の状況を本人が思い出して答えていることです。同じ人の体重を過去からずっと測定し続けた記録とは、測り方が異なります。現在の体重が気になる人ほど以前の体重をどう記憶しているか、といった問題も、数字を解釈するときに残ります。全国の集団を扱っていることと、過去の記録が正確であることは、それぞれ検討する項目です。

禁煙を始める前のメモには、体重だけでなく、普段の喫煙の本数も残しておくと、後で相談するときの背景になります。過去の細かな値を思い出して埋めるより、今わかることから記録を始めるほうが、測った値と記憶した値を混ぜずに済みます。増えやすい集団の特徴は、禁煙を諦めるための分類ではなく、体重の経過も早めに見ておくための材料として扱います。

体重の増加と心臓・血管の病気を一緒に追った研究

体重が増えたという結果から、禁煙の健康上の利益まで消えたと結論するには、病気そのものを調べる必要があります。Clair(2013)は米国の地域住民 3251 人を平均 25 年追跡し、その間に心血管疾患、つまり心臓や血管の病気が 631 件起きたことを報告しました。糖尿病のない参加者では禁煙が病気の危険の低さと関連し、禁煙後の体重増加はその関連を変えませんでした。

Clair(2013)では、最近やめた人の 4 年間の体重増加の中央値は、糖尿病のない人で 2.7 kg、糖尿病のある人で 3.6 kgでした。中央値とは、値を小さい順に並べたときの中央の値です。体重が増えても、心臓と血管の病気の危険は下がっていました。この結論の中心となる対象は糖尿病のない人で、糖尿病のある人の体重の数字も載っていることと、病気の危険について同じ強さの結論が得られたことを混同しないように読みます。

Kim(2018)は韓国で、心筋梗塞や脳卒中の診断歴がない 40 歳を超える男性 108 242 人を追跡しました。吸い続けた人と比べ、禁煙してBMIが増えた人のハザード比は、心筋梗塞で 0.33、95% 信頼区間は 0.16〜0.70、脳卒中で 0.75、95% 信頼区間は 0.57〜1.00でした。ハザード比は、追跡期間中の病気の起こりやすさを集団間で比べた指標で、個人が発症する確率そのものを表す値ではありません。

これらは、人々の生活とその後を追う観察研究です。禁煙できた人と吸い続けた人は、もともと暮らし方が違いうるため、違いを考慮した解析でも、禁煙以外の影響を取り切る難しさが残ります。喫煙の情報には自己申告が使われており、韓国の研究は男性に限られます。実際の生活での関係を示す根拠として読み、個人の危険をそのまま計算する道具にはしません。

表では、体重と病気の結果がともに扱われた研究を並べています。体重が変わった向きと病気が変わった向きを、同じ行で読み合わせるための比較です。

研究(著者 年) 対象 研究の形 体重の結果 病気・死亡の結果
Clair(2013) 米国の地域住民、糖尿病の有無で解析 追跡する観察研究 最近やめた人で増加 糖尿病のない人で心血管疾患の危険が低く、増加は関連を変えず
Kim(2018) 韓国の心筋梗塞・脳卒中の診断歴がない男性 健診データによる追跡研究 禁煙後のBMIの増減で分類 BMIが増えた群でも心筋梗塞・脳卒中の危険が低い

糖尿病の危険を気にする意味はある

Hu(2018)は米国の追跡研究で、禁煙後の体重変化と、糖尿病や死亡との関係を調べました。禁煙して 2〜6 年の人は、現在吸っている人より 2 型糖尿病の危険が高く、ハザード比は 1.22、95% 信頼区間は 1.12〜1.32でした。体重増加が大きいほど危険の上昇も大きく、体重が増えなかった人では高くなっていませんでした。一方、体重が大きく増えても、心血管疾患による死亡と、原因を問わない死亡の危険が低いという禁煙の利益は打ち消されませんでした。

この結果は、「太るなら禁煙は損」という判断にも、「禁煙していれば体重は気にしなくてよい」という判断にも収まりません。体重増加に伴って注意を向ける結果があり、それと同時に残る利益もあります。健康について読むときは、糖尿病の発症を扱う数字なのか、心臓や血管の病気による死亡を扱う数字なのかを区別します。見出しの「危険が高まる」「危険が下がる」だけを比べると、調べた出来事の違いを見落とします。

また、Hu(2018)のような比較の指標は、同じ状況の個人に病気が起きるかどうかの判定ではありません。自分の状態を考える際には、禁煙後の体重の推移に加えて、実際の健診結果を並べる必要があります。研究に出てくる比率を、自分の血糖値の代わりに使わないことが大切です。体重計の数字と検査の数字は、違う情報を伝えています。

禁煙して体重が増え、健診で血糖の値を指摘された人は、内科で相談してください。その際は、健診の結果と禁煙を始めた時期、体重がどう変わったかを一緒に伝えると、経過を説明しやすくなります。検査を受けた時点が禁煙の前か後かも、記録に添えておきます。禁煙を続けながら、指摘された項目への対応を考えるための相談です。

すでに糖尿病の治療を受けている人にとっては、集団の平均増加量に合わせて食事の量や治療を自分で変える読み方は向きません。現在の治療方針に、禁煙後の変化をどう組み込むかを考える必要があります。病気についての広告や説明でも、体重だけを最終目標にするのではなく、何の検査や健康状態を追っているのかまで読み取ります。

「太らずに禁煙」の方法を選ぶ前に見ること

Hartmann-Boyce(2021)のコクランのレビューは、禁煙後の体重増加を防ぐための食事、運動、薬、体重の変化を受け入れる支援などの試験をまとめました。レビューとは、決めた条件で研究を集めて検討するものです。結論は、長期の体重増加に対し、健康上役立つ大きさの効果を中程度以上の確かさで示した方法はない、というものでした。試験の人数が少なく、結果に偏りが生じる危険が高いか、十分に評価し切れない試験が多い点も残っています。

この結論を、食事や運動を何も考えなくてよいという意味に変える必要はありません。確かめたいのは、「これを使えば太らずに禁煙できる」という約束を支えるだけの結果があるかです。始めてすぐの体重の差を示していても、その差が後まで保たれたかは別に読む項目です。薬や方法の名前を覚えるより、体重を測った最終時点と、その時点まで残った参加者に目を向けます。

Hartmann-Boyce(2021)は、体重増加を抑えるための介入が禁煙の達成を妨げるという、中程度または高い確かさの証拠もないとしています。体重への働きかけをすれば必ず禁煙が失敗する、と決める根拠も弱いということです。選ぶときには、体重が増えなかった人の話だけでなく、その方法を始めた人が禁煙を続けられたかも調べます。両方の目的を扱う方法なら、両方の結果を示しているかが判断の要所です。

広告にビフォーアフターが載っている場合も、本人の体重の写真だけで比較を終えないようにします。比べた相手がいるか、参加をやめた人の結果も含むか、禁煙の継続をどう確かめたかを読みます。食事の変更や運動を同時に行っていれば、売られている方法だけの結果として説明していないかも確かめます。成功した例の紹介と、参加者全体で見た結果を分けて読む手順です。

始める前の準備としては、体重の記録と禁煙の記録を同じ場所に残す形にすると、どちらかだけで経過を評価せずに済みます。体重が増えた日に禁煙そのものを失敗と決めず、吸わずに過ごした経過と体重の変化をそれぞれ残します。増加への不安を抱えたまま新しい方法を次々に足すより、続けられる記録の取り方と、困ったときに相談する先を先に決めておきます。

よくある質問

体重が増えなかった人の体験談を参考にしてよいか

体験談は、その人が取り組む際に困ったことや、続けやすかった工夫を知るために読むと役立ちます。ただし、同じ工夫を選べば同じ体重になるという予測には使わず、禁煙前の体格や喫煙の状況も添えられているかを見ます。自分と似ているという印象だけで方法を選ぶより、体験者以外も含めた比較が示されているかを確かめるほうが、選ぶ理由をはっきりさせられます。

体重が増えたことを家族に責められたらどう伝えるか

体重についての心配は受け止めつつ、禁煙を続けるために助けてほしいことを言葉にして伝えます。たとえば、見た目への評価を繰り返すより、記録を続けることを見守ってほしいと頼む形です。体重の増加をなかったことにする必要はなく、変化への対応を考えていることと、禁煙を続けている経過を一緒に伝えると、家族に求める助けも明確になります。

記録を忘れた日があっても続ける意味はあるか

記録が抜けたところは空けたままにし、後から推測した体重を書き込まず、次に測ったところから続けます。禁煙前の値がなければ、初めて測った日付を付けて出発点にすると、いつからの変化なのかを説明できます。数値をきれいにそろえることより、実際に測った値と、本人の記憶や印象を区別して残すことが、後で経過を読み返す助けになります。

この記事の限界

対象には禁煙試験で禁煙を続けられた人や米国の住民、韓国の男性が含まれ、日本の成人全体を直接代表する構成ではありません。長期の病気との関係は観察研究が中心で、喫煙や体重の自己申告、禁煙した人と続けた人の暮らし方の違いが推定に影響します。平均の増加量と個人差の推定も、自分の今後の体重を決める値ではなく、集団の傾向を読むためのものです。

ここで行った研究の比較は、個人の血糖や治療状況を診察して食事・治療の方針を決める医療上の助言に代わるものではありません。禁煙の継続と長期の体重管理を両立する方法を選ぶには、増加を抑える効果の大きさと、その確かさについて追加の裏付けが要ります。

参考文献

  1. Aubin HJ. Weight gain in smokers after quitting cigarettes: meta-analysis. BMJ. 2012;345:e4439.
  2. Veldheer S. Ten-year weight gain in smokers who quit, smokers who continued smoking and never smokers in the United States, NHANES 2003-2012. Int J Obes (Lond). 2015;39(12):1727-1732.
  3. Clair C. Association of smoking cessation and weight change with cardiovascular disease among adults with and without diabetes. JAMA. 2013;309(10):1014-1021.
  4. Kim K. Weight gain after smoking cessation does not modify its protective effect on myocardial infarction and stroke: evidence from a cohort study of men. Eur Heart J. 2018;39(17):1523-1531.
  5. Hu Y. Smoking Cessation, Weight Change, Type 2 Diabetes, and Mortality. N Engl J Med. 2018;379(7):623-632.
  6. Hartmann-Boyce J. Interventions for preventing weight gain after smoking cessation. Cochrane Database Syst Rev. 2021;10:CD006219.

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よくある質問

体重が増えなかった人の体験談を参考にしてよいか

体験談は、その人が取り組む際に困ったことや、続けやすかった工夫を知るために読むと役立ちます。ただし、同じ工夫を選べば同じ体重になるという予測には使わず、禁煙前の体格や喫煙の状況も添えられているかを見ます。自分と似ているという印象だけで方法を選ぶより、体験者以外も含めた比較が示されているかを確かめるほうが、選ぶ理由をはっきりさせられます。

体重が増えたことを家族に責められたらどう伝えるか

体重についての心配は受け止めつつ、禁煙を続けるために助けてほしいことを言葉にして伝えます。たとえば、見た目への評価を繰り返すより、記録を続けることを見守ってほしいと頼む形です。体重の増加をなかったことにする必要はなく、変化への対応を考えていることと、禁煙を続けている経過を一緒に伝えると、家族に求める助けも明確になります。

記録を忘れた日があっても続ける意味はあるか

記録が抜けたところは空けたままにし、後から推測した体重を書き込まず、次に測ったところから続けます。禁煙前の値がなければ、初めて測った日付を付けて出発点にすると、いつからの変化なのかを説明できます。数値をきれいにそろえることより、実際に測った値と、本人の記憶や印象を区別して残すことが、後で経過を読み返す助けになります。

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