公開日: 更新日: 著者: 運営者情報
減量中に筋肉を残すたんぱく質の量|高たんぱく質の食事と体組成の試験
0.43 kg。Wycherley(2012)が減量食の試験をまとめたとき、たんぱく質を多くした群で、除脂肪量の減りが小さかった平均の差です。減量中の筋肉を残したくて食事やプロテインを増やすなら、この差がどんな条件で生まれたのかが気になります。たんぱく質の多い減量食は除脂肪量の減少を少し和らげることがありますが、筋肉を必ず保てる量は決まっていません。
台所で夕食のおかずを皿に盛りながら、食べる量を控えるべきか、たんぱく質を足すべきか迷う場面があります。栄養表示の含有量は足し算できても、その合計だけでは減量後の体の状態まで見通せません。試験には激しい運動を組み合わせたものも、食事だけを変えたものもあり、参加者の年齢や減量の進み方も違います。量の数字を選ぶ前に、体の何を測り、どの条件で差が出たのかを読むと、食事を見直す方向が見えてきます。
ダイエットで筋肉を落とさないために読む「除脂肪量」
高たんぱく質の食事を紹介する広告では、筋肉を保ちながら体脂肪を減らす、という言い方を見かけます。そこで根拠として挙げられる体組成は、体を脂肪などの成分に分けて見たものです。とくに「除脂肪量」は、体重のうち脂肪を除いた部分で、筋肉だけでなく水分なども含みます。減量の試験でこの値が保たれていたら、まずは脂肪以外の部分の減りが抑えられた、と受け取ります。
ここで確かめたいのは、広告にある「筋肉」という言葉と、研究で測った項目の対応です。全身の除脂肪量を測る試験もあれば、太ももの筋の量や、脚で力を出す能力を調べる試験もあります。筋力は力の強さを表し、歩く能力などの身体機能は実際の動作の成績を表します。これらを分けて読むと、量についての結果が、力や動きの説明にまで広げられている箇所に気づけます。
もうひとつは「残った」という表現の読み方です。高たんぱく質の群のほうが減少が小さくても、その群で減少自体が起きている場合があります。「相手の群より多く残った」と「開始時から減らなかった」では、試験の結果として伝える内容が変わります。
Wycherley(2012)は、除脂肪量の減少を和らげる小さな利益を報告しています。一方、Backx(2016)は除脂肪量に加えて筋力や身体機能を調べ、たんぱく質を多くした群の優位性を示しませんでした。筋肉を残したいという希望に答えるには、体組成の数字と動作の結果を並べる必要があります。広告の見出しを読むときも、測定項目の名前まで目を通すと、何が良くなったという話なのかが明確になります。
食事の試験をまとめると、減りを和らげる差は小さい
Wycherley(2012)は、無作為化比較試験(くじ引きのような方法で組を分けて比べる試験)24 本、1063 人をまとめたメタ分析です。メタ分析とは、複数の研究の結果をまとめて計算する方法を指します。成人の減量食について、摂取エネルギーと脂質をそろえ、標準的なたんぱく質量の食事と、多めの食事を比較しています。食べる総量の条件を合わせて、たんぱく質の割合を変えた比較という点が重要です。
Wycherley(2012)で、高たんぱく質の群は除脂肪量の減りが平均 0.43 kg 小さく、95% 信頼区間は 0.09〜0.78 kg でした。信頼区間は、推定した群の差にどれくらい不確かさがあるかを表す幅です。この数値は「たんぱく質を増やした人の筋肉がそれだけ増えた」という意味ではなく、標準的な食事の群と比べた減少の差を表しています。個人の減量目標に足したり、将来の筋肉量として取り置きしたりする数字ではありません。
脂肪のほうも見ると、Wycherley(2012)での脂肪量の変化の群間差は -0.87 kg、95% 信頼区間は -1.26〜-0.48 kg でした。高たんぱく質の群で、脂肪がより多く減る向きの結果です。脂肪を減らしつつ除脂肪量を残すという目的に沿う結果ですが、著者の評価は小さな利益にとどまります。大幅な変化を約束する広告と比べるなら、差の向きだけでなく大きさまで読むことが大切です。
この比較は、今の食事に何かを追加するだけの試験とは条件が違います。エネルギーを制限した食事の中でたんぱく質を多くしており、食事全体の配分も変えています。また、たんぱく質の量、期間、測り方は試験ごとに異なります。まとめた平均には幅のある条件が含まれるため、食事を組み立てる際には、減量のための調整とたんぱく質の確保を同時に考えます。
年齢の高い人でも、量を保つ方向の結果はある
Kim(2016)は、年齢の高い人の減量に絞って、無作為化比較試験 20 本をまとめました。たんぱく質が多い食事を、より少ない食事と比べたメタ分析です。全体として、多い食事のほうが除脂肪量をより保ち、脂肪量をより減らすという結論でした。若い人の運動の試験だけが、高たんぱく質の食事を考える根拠になっているわけではありません。
この結果は、食事量を減らすときに、たんぱく質を含むおかずまで無造作に減らしてよいとは考えにくい理由になります。ただし、Kim(2016)の結論を、筋力や日常生活の動作まで守られるという約束に広げることはできません。除脂肪量と脂肪量に関する結果として読み、歩きやすさや力の出しやすさまで話を進めるには、それらを測った試験も必要になります。
年齢の高い人という括りの中にも、食事を減らす前の状態や、運動の条件に違いがあります。Kim(2016)のように複数の試験をまとめる方法は、全体の向きをつかむのに役立ちます。その一方で、個別の試験に戻ると、食事を十分に管理した条件でも差が出ない例が見つかります。平均で有利という結論と、特定の条件で差が出なかったという結果を、一緒に読む必要があります。
たとえば、次に紹介する運動つきの試験と、後に扱う運動なしの試験では、参加者の特徴も変わります。年齢だけを取り出して「若いから効いた」「年齢が高いから効かなかった」と分類すると、食事や運動の条件が抜け落ちます。高たんぱく質という言葉を年齢別の処方に置き換えるより、食事の比較、体の測定、運動の内容をひとまとまりで読むほうが、研究の結論に忠実です。
激しい運動を組み合わせた試験は特殊な条件
Longland(2016)は、カナダの若い男性を各群 20 人に分けた試験です。4 週にわたり、必要なエネルギーより約 40% 少ない食事を用意し、たんぱく質の量を変えました。毎日の総摂取量は、体重 1 kg あたり 2.4 g の群と 1.2 g の群でした。たんぱく質を補う飲み物だけの量ではなく、食事全体での量を比べています。
Longland(2016)の参加者は、両群とも筋トレと高強度の間欠運動を多く行いました。間欠運動は、強い運動と休息などを挟みながら繰り返す運動です。ほぼ毎日、激しく体を動かすという特殊な条件が、この試験の前提にあります。高たんぱく質の群だけが運動したのではなく、運動を組み合わせたうえで食事の違いを比べています。
結果はLongland(2016)で、高たんぱく質の群のほうが除脂肪量の増加と脂肪量の減少で上回りました。減量食でも、運動を含む条件のもとで脂肪以外の部分が増える結果が得られた点は注目されます。この結果から実生活へ持ち帰るなら、たんぱく質の数字だけを抜き出すのではなく、運動を行ったことと、食事が用意されたことも一緒に残します。
また、Longland(2016)の比較は、試した量のうち多いほうが有利だったことを示します。どこまで減らしても同じ効果が保たれるかを細かく探した試験でも、さらに増やすともっと良くなるかを調べた試験でもありません。食事の数値を「これ以上なら筋肉が減らない」という境目として使うと、比較の目的が変わってしまいます。
この試験を読むときは、食事と運動を同時に整えた条件に価値を置くと理解しやすくなります。減量食の工夫としてたんぱく質を検討する材料はありますが、若い男性の短期の結果を日常の食事や長期の減量へそのまま当てはめられません。実行できる食事と運動の組み方を考える際の、条件のはっきりした一例として扱います。
運動なしでは差が出なかった試験も並べる
Backx(2016)は、過体重・肥満の男女 61 人を対象にした試験です。年齢は平均 63 歳で、ばらつきを表す標準偏差は 5 歳でした。12 週にわたって摂取エネルギーを 25% 減らし、毎日のたんぱく質を体重 1 kg あたり 1.7 g と 0.9 g で比較しました。食事の大部分を用意して管理しましたが、筋トレは組み合わせていません。
Backx(2016)では、除脂肪量は高たんぱく質の群で 1.8±2.2 kg、通常量の群で 2.1±1.4 kg 減り、群の差は統計的にはっきりしませんでした。脚の筋力と歩く能力でも、高たんぱく質の群の優位性は見られませんでした。食事を多めのたんぱく質に変えても、この条件では量や動作を保つ上積みが得られなかったという結果です。
Smith(2018)は、肥満のある閉経後の女性 70 人、50〜65 歳を対象にしました。体重を維持する群、通常のたんぱく質量で減量する群、乳由来のたんぱく質であるホエイを補って減量する群を比べています。減量する群の毎日のたんぱく質は、体重 1 kg あたり 0.8 g と、補充を含めた 1.2 g でした。運動を組み合わせず、補充が筋の量や力に役立つかを見ています。
Smith(2018)では、減量の途中に補充群で太ももの筋の減りが小さくなったものの、減量が進むと差は消え、筋力にも効果が見られませんでした。著者は、この対象者へのホエイの補充には、筋肉量や筋力に対する臨床的に重要な効果がないと結論づけています。運動ありの若い男性の試験では上積み、運動なしの中高年の試験では上積みが乏しい結果です。ただし参加者や期間も異なるため、運動の有無だけが結果を分けた原因と断定せず、以下の条件を並べて読みます。
| 研究(著者 年) | 対象と人数 | 期間 | 運動の有無 | たんぱく質の量 | 除脂肪量の結果 |
|---|---|---|---|---|---|
| Longland(2016) | 若い男性、各群 20 人 | 4 週 | 激しい筋トレと間欠運動あり | 毎日、体重 1 kg あたり 2.4 g と 1.2 g | 多い群で増加が大きい |
| Backx(2016) | 過体重・肥満の男女 61 人 | 12 週 | 筋トレなし | 毎日、体重 1 kg あたり 1.7 g と 0.9 g | 両群で減少、群間差は明確でない |
| Smith(2018) | 閉経後の肥満の女性 70 人 | 減量の進行に合わせて評価 | 運動の組み合わせなし | 減量群は毎日、体重 1 kg あたり 1.2 g と 0.8 g | 太ももの筋の量を評価し、途中の差は減量が進むと消失 |