公開日: 更新日: 著者: 運営者情報
ナッツを食べると太るのか|カロリーの数字と体重の試験
カロリーが高いナッツを間食に選ぶと、体重は増えるのでしょうか。職場の休憩室で袋の栄養表示を見ながら、スマホで読んだ「やせる食べ物」という紹介を思い出すと、どちらを信じればよいのか迷います。ナッツを加えた食事の比較試験では体重の増加は見られず、減る結果が出た場合も差は小さい、というのが研究をまとめた答えです。 食べ物のエネルギー量と、実際に食生活を変えた後の体重を並べると、判断に使う数字が違うことに気づきます。
袋に書かれたカロリーは、その食品からとるエネルギーの目安です。一方、研究で比べる体重は、ナッツを含む食事を続けた人と、比較の食事を続けた人の結果です。間食を取り替える場面と、いつもの間食を残してナッツも食べる場面では、食事全体の変え方が違います。広告に研究の名前が添えられていたら、「食べた人はスリムだった」という調査なのか、食事を割り振って変化を比べた試験なのかまで読むと、見出しの印象から離れて考えやすくなります。
ナッツで太るかを調べた試験では、増加は見られなかった
Flores-Mateo(2013)は、ナッツを含む食事と対照の食事を比べた 33 本の臨床試験をメタ分析しました。メタ分析とは、複数の研究の結果をまとめて計算する方法です。体重の平均の差は -0.47 kg で、ナッツを食べた群のほうが軽い向きでしたが、統計的には明確な差がありませんでした。BMIという身長に対する体重の程度を表す指標と、お腹周りを測る腹囲にも、はっきりした差は出ていません。
この結果を読む鍵は、平均の値の周囲にどれくらいの不確かさがあるかです。Flores-Mateo(2013)の体重差の 95% 信頼区間は -1.17〜0.22 kg でした。信頼区間は推定の不確かさを幅で示したもので、この幅には群の差がない値も含まれます。平均値が減る側にあることだけを拾うと、著者が示した「増加は見られなかった」という結論を、減量の約束へ変えてしまいます。
Li(2018)は、無作為化試験 62 本、7184 人の結果を統合しています。無作為化とは、くじ引きのように組を分け、参加者の特徴が片方に偏りにくくする方法です。ナッツを食べた群は、比較の群より体重が平均 0.22 kg、腹囲が平均 0.51 cm 少なく、こちらでは統計的に明確な差がありました。結果を「効果あり」と短く紹介する前に、実際の差の大きさまで読む必要があります。
統計的に差が見つかることと、減量を期待して食品を買い足すだけの変化があることは、別々に判断します。Li(2018)の平均差は小さく、Flores-Mateo(2013)も合わせて読むと、食事にナッツを含めたことによる大きな体重増加は示されず、減量の上乗せは控えめという姿が見えます。カロリーの高さだけを理由に避ける考えにも、体重を落とすために積極的に足す考えにも、試験の結果を大きく読みすぎない姿勢が役立ちます。
長く追った調査で見えたのは、体重の増え方の小さな差
Freisling(2018)は、欧州の 10 か国から集まった 25〜70 歳の男女 373,293 人を調べました。同じ人たちを時間をかけて追う追跡研究で、ナッツを食べる習慣と、その後の体重の変化の関係を見ています。ナッツの摂取量が最も多い群は、食べない群と比べて、5 年間の体重増加がわずかに少ない結果でした。
Freisling(2018)の群間差は、5 年で -0.07 kg です。ここでのマイナスは、ナッツを多く食べる群の「体重の増え方」が小さかったことを表します。参加者がその量だけやせた、という意味で読むと結果の向きが変わってしまいます。著者の結論も、摂取量の多さと体重増加の少なさが関連する、という内容です。
長期にわたる大人数の結果は、日常の食習慣を考えるうえで参考になります。ただし、この調査で後から聞いた体重は自己申告で、ナッツを食べる群と食べない群には、食事以外も含む生活習慣の違いが残ります。食べる量を研究者が割り振った試験と違い、普段から自分でナッツを選んでいた人たちの比較なので、ナッツそのものが差の原因だとは言えません。
同じ Freisling(2018)では、摂取量が最も多い群は、過体重または肥満になる危険がそれぞれ 5% 低いという関連も報告されました。これは、体重がその割合だけ減ったという数字ではなく、後に過体重や肥満に該当する人の出やすさを比べた数字です。体重の変化と、ある状態になる危険の比では、数字が答える問いが違います。広告が割合だけを大きく掲げているなら、何が減った割合なのかを先に読み取ります。
この研究を食べ方の判断に使うなら、「高カロリーの食品をよく食べる人は必ず大きく体重が増える」という見方を見直す材料になります。長い年月を追ったこと自体から、大きな減量効果を連想する必要はありません。体重増加の小さな差と、食習慣に伴う関連として受け取ると、試験の結果とも無理なくつながります。
糖尿病の人を対象にすると、体重にも腹囲にも明確な差はなかった
Fernández-Rodríguez(2022)は、2 型糖尿病の人を対象に、ナッツを加えた食事と対照の食事を比べた無作為化比較試験をまとめました。含まれたのは 15 本、899 人です。体重、BMI、腹囲、体脂肪率という、体の大きさや脂肪の状態を捉える指標を調べ、どの指標にも増える方向、減る方向の明確な差は見られませんでした。
体重だけでは捉えにくい変化がありそうだと考えたときも、この研究は腹囲や体脂肪率を合わせて見ている点が参考になります。体脂肪率は、体重のうち脂肪が占める割合です。Fernández-Rodríguez(2022)の結果では、体重の差が目立たなくても、お腹周りや脂肪の割合がはっきり改善していた、という結論にはなっていません。結果が出なかった項目も含めて読むことで、食品への期待を整えられます。
一方、この分析は糖尿病のある人に対象を絞っており、試験ごとにナッツの量や種類、続けた期間が異なります。量を増やすほど体重が減るという関係を確定するための結果として使うには、そうした条件ごとの検討が必要です。日常の食事に取り入れる際には、食品の名前だけで判断せず、食事全体の中でどう扱うかを考えます。
Li(2018)の統合結果と並べると、全体で小さな差が出た研究があっても、対象を絞ると差が出ない結果があることがわかります。体重を減らす目的で読むなら、糖尿病の人の試験を、一般の参加者も含む試験の結論に埋もれさせないことが大切です。自分と近い条件の人を調べた結果を選ぶ作業が、広告の短い言葉を読むときの助けになります。
「食べる人はスリム」という調査では、食べる前後を比べていない
O’Neil(2015)は、米国の国民健康栄養調査を使い、19 歳以上の成人 14,386 人について、ナッツの摂取と体格などの関係を調べました。ナッツを食べる人は、食べない人よりBMIや腹囲が低いという結果でした。これは横断研究と呼ばれ、集団のある時点の姿を切り取って比べる調べ方です。
たとえば「普段から食べ物を選ぶ人の中でナッツもよく選ばれている」という事情でも、同じような関連は生じます。これは参加者全員がそうだったという説明ではなく、同時点の比較に残る解釈の例です。O’Neil(2015)では、食べた量も聞き取りで調べています。食習慣の聞き取りと体格の比較から読み取れるのは、ナッツを食べる人がどんな体格だったかであり、食べ始めた後にどう変わったかとは区別して扱います。
追跡研究なら後の変化を追えますが、ナッツを選ぶ人の暮らし全体も一緒についてきます。食事を割り振る試験では、その違いを小さくして、食事を変えた影響に近づこうとします。この違いを押さえると、研究の人数が多い順に信用するのではなく、広告の主張に合う比較が行われたかで読めます。
研究ごとの役割を、次の表に並べました。試験をまとめた結果は食事を変えたときの差、追跡研究は後の変化との関連、横断研究はある時点の体格との関連を示しています。
| 研究(著者 年) | 研究の形 | 人数 | 体重・腹囲の結果 | 言えること |
|---|---|---|---|---|
| Flores-Mateo(2013) | 臨床試験のメタ分析 | 総人数の記載なし | 体重差 -0.47 kg、統計的な差なし | ナッツを含む食事で増加は見られなかった |
| Li(2018) | 無作為化試験のメタ分析 | 7184 人 | 体重は平均 0.22 kg、腹囲は平均 0.51 cm 少ない | 明確な差はあるが小さい |
| Freisling(2018) | 追跡研究 | 373,293 人 | 5 年間の体重増加の差 -0.07 kg | 摂取量の多さと増加の少なさが関連した |
| Fernández-Rodríguez(2022) | 糖尿病の人の無作為化試験のメタ分析 | 899 人 | 体重・腹囲とも明確な差なし | 対照の食事と比べて増減の差は出なかった |
| O’Neil(2015) | 横断研究 | 14,386 人 | 食べる人のBMI・腹囲が低い | 食習慣と、その時点の体格が関連した |
袋の表示を、実際に取り分ける量につなげる
買う前に見るのは、袋の大きさと、栄養表示の基準になっている食品の量です。表示が袋全体の値なのか、一定量当たりの値なのかで、食べた分の捉え方が変わります。見た目の少なさだけで判断せず、自分が取り分ける量と、表示の基準量を対応させます。これはナッツに特別な減量効果を期待する手順ではなく、何をどれだけ食べているかを把握する手順です。
次に、今までの間食をどうするかを決めます。取り替えるなら元の間食を含めて比べ、追加するなら食事全体に増える分として考えます。試験でナッツを含む食事を比べた結果を、自分の食生活に近づけて読むには、ナッツ以外の食べ物も視野に入れることが欠かせません。元の間食を残すのか減らすのかを書き出しておくと、食品名だけを入れ替えて考えるより、変更点がはっきりします。
体重の結果が穏やかだったことから、食べた後の症状まで軽く考えないようにします。口の中のかゆみ、じんましん、息苦しさが出た経験のある人は、食べ続ける前にアレルギーについて医師に相談してください。体重への影響を調べた研究と、食べた直後の反応への対応は、それぞれ必要です。症状を経験した人にとっては、カロリーを量ることより、食べてよい食品かを確かめることが先になります。
食品の選択としては、味や食べやすさでナッツを選ぶ余地があります。減量目的で買い足すときには、小さな平均差にどれほど期待しているかを考え直すこともできます。袋を開けた後の食べ方まで決めておくと、「研究があるから」という理由だけで量を増やす判断を避けやすくなります。食べることを選んだら、いつもの間食との関係を決め、取り分ける量を量ります。
よくある質問
カロリーの数字が高くても、食事に取り入れてよいのか
体重への影響を考えるなら、食品のカロリーと、食事を変えた後の試験結果を両方見ます。Flores-Mateo(2013)では、ナッツを含む食事を比べても体重や腹囲の増加は見られませんでした。自分の食べ方を決める際には、これまでの間食との入れ替えか、追加かをはっきりさせると整理しやすくなります。表示の基準量と、実際に食べる量を対応させて判断します。
減るという試験があるなら、減量目的で買う価値があるのか
Li(2018)では、比較の食事より体重が平均 0.22 kg 少ない結果でした。統計的な差がある一方、食品を変えるだけで大きく体重が動くという期待とは隔たりがあります。もともとナッツが好きで間食として選ぶ判断と、体重を大きく落とす効果を求めて買い足す判断では、求めるものが違います。購入の理由を平均差の大きさと照らし合わせることが役立ちます。
糖尿病の人なら、体重管理のために多く食べるとよいのか
Fernández-Rodríguez(2022)がまとめた糖尿病の人の試験では、体重、腹囲、体脂肪率などに明確な改善は見られませんでした。体重の変化については、対照の食事と同程度という結果として受け取ります。普段の食事に組み込むときは、今の食事療法の中での位置づけを優先します。ナッツを食べるかだけでなく、ほかに食べているものとの組み合わせを考えます。
スリムな人がナッツを食べているという紹介はどう読めばよいか
O’Neil(2015)のような横断研究は、その時点で食べる人と食べない人を比べています。食べ始める前の体格と、その後の変化を順に測った結果とは読み分けます。紹介文に「食べたら」と書かれていても、研究が示したのは「食べる人に見られた特徴」の場合があります。見出しから研究の方法へ戻ると、食習慣の関連を、食べた効果へ置き換えていないか点検できます。
この記事の限界
比較した食事の内容、ナッツの量や種類、続けた期間が研究ごとに異なり、まとめた平均差には複数の条件が含まれています。長期の体重変化を追った研究には自己申告の体重が使われ、食習慣に伴う生活の違いも残っています。米国の横断研究も含むため、日本で普段食べている間食を替えたときの変化に、そのまま当てはめることはできません。
この整理は体重をめぐる研究の読み方を扱い、個別の食事療法やアレルギーの診断を決めるものではありません。食べる量と食事全体の替え方をそろえても、どの人で小さな体重差が長く続くかまでは、これらの結果から判断できません。
参考文献
- Flores-Mateo G. Nut intake and adiposity: meta-analysis of clinical trials. Am J Clin Nutr 2013;97(6):1346-1355.
- Li H. Nut consumption and risk of metabolic syndrome and overweight/obesity: a meta-analysis of prospective cohort studies and randomized trials. Nutr Metab (Lond) 2018;15:46.
- Freisling H. Nut intake and 5-year changes in body weight and obesity risk in adults: results from the EPIC-PANACEA study. Eur J Nutr 2018;57(7):2399-2408.
- Fernández-Rodríguez R. Nut consumption, body weight, and adiposity in patients with type 2 diabetes: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Nutr Rev 2022;80(4):645-655.
- O’Neil CE. Tree Nut consumption is associated with better adiposity measures and cardiovascular and metabolic syndrome health risk factors in U.S. Adults: NHANES 2005-2010. Nutr J 2015;14:64.
広告を疑う目を持ったまま、溶岩の床に立ってみる
- 向く人: 効果の話を研究の規模と比較の条件で割り引いて聞ける人
- 向く人: 暑い部屋で体を動かす時間そのものを習慣にしたい人
- 向かない人: 汗の量や翌朝の体重の減り方で効果を判定したい人
- 向かない人: 腎臓や心臓の持病で、暑い環境での運動を医師に止められている人
このサイトはオンザショア立川店の運営者が制作しています。立川駅から徒歩1分、溶岩プレートの床で行うホットヨガのスタジオです。
よくある質問
カロリーの数字が高くても、食事に取り入れてよいのか
体重への影響を考えるなら、食品のカロリーと、食事を変えた後の試験結果を両方見ます。Flores-Mateo(2013)では、ナッツを含む食事を比べても体重や腹囲の増加は見られませんでした。自分の食べ方を決める際には、これまでの間食との入れ替えか、追加かをはっきりさせると整理しやすくなります。表示の基準量と、実際に食べる量を対応させて判断します。
減るという試験があるなら、減量目的で買う価値があるのか
Li(2018)では、比較の食事より体重が平均 0.22 kg 少ない結果でした。統計的な差がある一方、食品を変えるだけで大きく体重が動くという期待とは隔たりがあります。もともとナッツが好きで間食として選ぶ判断と、体重を大きく落とす効果を求めて買い足す判断では、求めるものが違います。購入の理由を平均差の大きさと照らし合わせることが役立ちます。
糖尿病の人なら、体重管理のために多く食べるとよいのか
Fernández-Rodríguez(2022)がまとめた糖尿病の人の試験では、体重、腹囲、体脂肪率などに明確な改善は見られませんでした。体重の変化については、対照の食事と同程度という結果として受け取ります。普段の食事に組み込むときは、今の食事療法の中での位置づけを優先します。ナッツを食べるかだけでなく、ほかに食べているものとの組み合わせを考えます。