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オメガ3のサプリで心臓病は防げるのか|「サラサラ」の広告と大規模試験

25,871 人の試験では、心臓や血管の主な病気は偽薬より減りませんでした。処方薬で利益が出た条件と心房細動の増加を並べ、市販サプリへ結果を当てはめる際の限界を説明します。

オメガ3のサプリで心臓病は防げるのか|「サラサラ」の広告と大規模試験

通販サイトの画面で魚の油のサプリを見比べていると、「血液サラサラ」という言葉の隣に、成分の量や研究のグラフが並んでいます。健康診断の結果が気になっていると、毎日飲めば心筋梗塞や脳卒中を遠ざけられそうに感じる場面です。市販の魚油サプリを飲むことで心臓病を防げるとする根拠は十分でなく、利益が出た大規模試験は、危険の高い患者に高純度のEPAの処方薬を使った条件での結果です。

同じオメガ3という名前でも、参加した人の健康状態、成分の組み合わせ、飲む量によって、試験の答えはわかれています。一般の人を対象にした試験では、心臓や血管の主な病気をまとめた結果に明確な差が出ませんでした。一方で、心房細動という脈の乱れが増えた報告もあり、期待する利益と好ましくない変化を一緒に読む必要があります。

迷いやすいのは、血液検査の値が下がる話と、実際に病気になった人が減る話が、同じ広告の中に置かれることです。買う前に確認したいのは、目立つ数字の大きさだけでなく、研究で使ったものと購入を考えているものが対応しているかという点です。大規模試験の中身を追うと、予防への期待をどこに置くかが見えてきます。

「サラサラ」を、試験で測った出来事に置き換える

オメガ3は脂肪酸という脂肪の成分の仲間で、魚の油に含まれるEPAやDHAが今回の研究の中心です。広告の「サラサラ」は、血液の何を測って、どれだけ変わった状態を指すのかが曖昧な言葉です。そのため、この言葉だけを手掛かりに、心筋梗塞や脳卒中の予防まで期待すると、研究の結果との間に飛躍が生まれます。

心臓と血管に関わる病気を、研究では心血管病とまとめて呼びます。予防を確かめる試験では、飲んだ人の感想だけでなく、心筋梗塞、脳卒中、心血管病による死亡などが実際に起きたかを追います。血液検査で測る中性脂肪は血液中の脂質の一種ですが、その値の変化と、病気の発生は測っている内容が異なります。Abdelhamid(2020)の研究のまとめも、中性脂肪の低下と、冠動脈の病気のわずかな減少を分けて報告しています。

こうした予防の試験を読む際には、「主要評価項目」という言葉が役立ちます。これは試験が中心の答えとして評価する結果のことで、複数の病気や死亡をまとめて判定する場合があります。そのほかに調べる結果は副次評価項目と呼ばれ、研究全体を理解する材料になります。広告に載った好ましい結果が、試験の中心の答えなのか、その一部なのかで、受け取り方が変わります。

また、無作為化比較試験とは、くじ引きのような方法で参加者を組に分け、介入の違いを比べる試験です。サプリや薬の試験では、比べる相手に、有効成分を含まない偽薬を使うことがあります。成分を飲んだ組だけの変化を見るより、比べる組にも同じような出来事が起きたかまで調べるほうが、予防への上乗せを評価しやすくなります。

利益が出たのは、高い危険を抱えた人の処方薬の試験

Bhatt(2019)が報告した試験は、中性脂肪が高く、心血管病の危険も高い患者を対象にしています。すでに心血管病がある人や、糖尿病などの危険因子がある人で、コレステロールを下げる薬を飲んでいても中性脂肪が高いという条件でした。健康への漠然とした不安から、通販でサプリを選ぶ人とは、治療の背景が大きく違います。

Bhatt(2019)では、8,179 人を高純度EPAの処方薬か偽薬に分け、追跡期間の中央値は 4.9 年でした。中央値は、期間の長い順に並べたときに中央にくる値です。処方薬の量は 1 日 4 g で、主な心血管の出来事が起きた割合は、処方薬の組で 17.2%、偽薬の組で 22.0% でした。危険の高い患者に対し、すでに受けている治療に加えた場合の利益が示された形です。

Bhatt(2019)のハザード比は 0.75、95% 信頼区間は 0.68〜0.83 でした。ハザード比は、追跡中の出来事の起こりやすさを組どうしで比べた値で、信頼区間は推定に伴う幅を示します。比だけを大きく取り上げるより、両方の組で実際に起きた割合と並べると、予防できた程度を捉えやすくなります。薬を使った組でも出来事は起きており、利益は発症を完全になくすものではなく、危険を下げる形で表れています。

この研究は市販のサプリの試験ではなく、処方薬の試験です。高純度の成分を高用量で用い、対象も選んでいるため、同じ成分名のある市販品に結果をそのまま当てはめられません。資金については、Bhatt(2019)は製薬会社から、後述するManson(2019)は米国国立衛生研究所などの公的機関から支援を受けています。購入画面でこの研究が紹介されていたら、まず処方薬という条件が表示に残っているかを確かめることが大切です。

オメガ3のサプリの効果は、大規模試験でもそろわない

一般の人を調べたManson(2019)の試験では、25,871 人を魚油か偽薬に無作為に分け、中央値で 5.3 年追跡しました。心筋梗塞、脳卒中、心血管病による死亡をまとめた主な出来事は、魚油の組で 386 人、偽薬の組で 419 人に起きました。ハザード比は 0.92、95% 信頼区間は 0.80〜1.06 で、主要な結果に統計的に明確な差はありませんでした。

Manson(2019)では、副次的に調べた心筋梗塞に好ましい結果も見られました。ただし、それだけを抜き出すと、病気をまとめた主要評価項目で減少が示されなかったことが読み手に届かなくなります。予防を期待する人に必要なのは、好ましい部分を消すことでも、そこだけを強調することでもなく、試験の中心の結論と一緒に受け取ることです。

危険の高い人なら一律に利益が出る、という結果でもありません。Nicholls(2020)は、コレステロールを下げる薬で治療中の 13,078 人を対象に、EPAとDHAを含む製剤をコーン油と比べました。主な出来事の割合は 12.0% と 12.2% で明確な差がなく、試験は効果が見込めないとして途中で中止されました。予定より出来事が少なくなったという研究上の弱さもありますが、著者の結論は、この製剤を予防に使う利益を支持していません。

Bhatt(2019)とNicholls(2020)は、ともに 1 日 4 g を使って結果がわかれました。同じ量で、一方は減少、もう一方は差なしでした。成分の組み合わせや対象、比べた相手が異なる試験なので、違いの原因を量だけで説明することはできません。表では、試験全体の主な結果を並べています。

試験(著者 年) 対象と人数 量 期間 主な結果
Bhatt(2019) 中性脂肪が高く心血管病の危険が高い 8,179 人 高純度EPAの処方薬を 1 日 4 g 中央値 4.9 年 心血管の出来事は 17.2%、偽薬は 22.0%
Manson(2019) 米国の一般の人 25,871 人 魚油を少量ずつ毎日 中央値 5.3 年 主な出来事は魚油で 386 人、偽薬で 419 人、明確な差なし
Nicholls(2020) 薬で治療中の危険が高い 13,078 人 EPAとDHAの製剤を 1 日 4 g 効果が見込めず早期中止 主な出来事は 12.0%、コーン油は 12.2%、明確な差なし

研究をまとめると、利益は小さい範囲にとどまる

個別の試験で結果が割れたときに参考になるのが、メタ分析です。複数の研究をまとめて計算し直し、全体としてどちらの方向に、どの程度の差があるかを調べます。ただし、成分や参加者が違う試験を集めた場合には、その平均の結果にさまざまな条件が含まれます。平均で少し利益があるという話と、手元の商品にその利益があるという話の間には、条件の照合が必要です。

Hu(2019)のメタ分析では、処方薬で大きな利益が出た試験を除いても、心筋梗塞の率比は 0.92、95% 信頼区間は 0.86〜0.99 でした。率比は、病気が起きる率を比較する値で、結果は少し減る方向でした。量が多い試験ほど減り方が大きい傾向も報告されていますが、対象、製剤、量の異なる試験を横断した分析です。ここで注目するのは、大きく予防できるという結論よりも、まとめた差が小さかった点です。

Abdelhamid(2020)のコクランの系統的レビューは、あらかじめ決めた条件で研究を集めて評価し、86 本の無作為化試験、162,796 人を扱いました。魚由来の成分を増やしても、死亡全体、心血管の出来事全体、脳卒中などはほとんど変わらないという結果でした。その一方で、心臓を養う血管である冠動脈の病気による死亡や出来事は、わずかに減る可能性がありました。

Abdelhamid(2020)が示した冠動脈の病気による死亡の推定は、334 人が介入を受けて追加で 1 人の死亡を防ぐ程度でした。この推定の根拠の確かさは低いと評価され、試験ごとの成分、量、対象も混ざっています。これは、参加者全員に同じ大きさの利益が生じるという意味ではなく、集めた研究での平均的な差を人数で表したものです。冠動脈の病気に限った小さな利益を、心臓や血管の病気すべてを広く防ぐという広告に広げると、結果の範囲を超えます。

減少の報告と一緒に読む、心房細動や胃腸の不調

期待する利益だけを比べると、量を増やす方向に判断が傾きやすくなります。しかし、予防のために長く飲むものでは、増えた出来事も同じように検討する必要があります。とくに今回の試験で注意したいのは、心房細動という、心臓の心房の動きが乱れ、脈が不規則になる不整脈です。

Gencer(2021)は、心血管の結果を調べた試験をまとめ、魚由来の成分をとる組で心房細動が増える傾向を報告しました。ハザード比は 1.25、95% 信頼区間は 1.07〜1.46 でした。重みを付けた平均の追跡期間は 4.9 年で、1 日 1 g を超える量を試した研究で増加が大きい傾向がありました。心房細動そのものを中心に調べた試験は少なく、副作用として報告された情報も含むという弱さがあります。

Bhatt(2019)でも、利益と害の両方が同じ試験に現れています。心房細動や、同じく心房のリズムが乱れる心房粗動による入院は、高純度EPAの組で 3.1%、偽薬の組で 2.1% でした。心血管の主な出来事が減ったことと、不整脈での入院が増えたことは、どちらも判断材料になります。予防への利益が見えた試験だからといって、好ましくない出来事まで消えるわけではありません。

胃腸の不調については、Nicholls(2020)で好ましくない症状の報告がオメガ3の組で 24.7%、コーン油の組で 14.7% と多くなっていました。この結果も含めると、成分を多くとること自体を目標にする選び方は適切ではありません。血液を固まりにくくする薬を飲んでいる人や、動悸、脈の乱れに気づいた人は、サプリを始める前、または続ける前に、その状況を医師に伝えてください。相談時には、飲もうとしているものの成分表示と、すでに使っている薬の情報を一緒に示すと話を進めやすくなります。

購入前は、成分名より先に研究との対応をたどる

通販の説明を読むときは、最初に研究で使ったものが処方薬か市販のサプリかを確かめます。次に、対象が一般の人なのか、すでに病気や危険因子があって治療を受けている人なのかを見ます。Bhatt(2019)の利益を判断するうえでは、コレステロールを下げる薬で治療していても中性脂肪が高い、という参加条件が重要でした。広告からこの条件が消えていると、自分にも同じ結果が得られそうに読めてしまいます。

続いて、成分の組み合わせと量を確認します。高純度のEPAだけを使った試験と、EPAとDHAを組み合わせた試験では結果が異なり、量が同じでも答えはそろいませんでした。含有量の表示が大きいという理由だけで選ぶと、好ましくない出来事の増加を見落とします。試験の条件と商品の表示を対応させる作業は、効きそうな成分名を探す作業より先に行う価値があります。

最後に、広告の数字が何の減少を表しているかを確認します。中性脂肪の値、心筋梗塞だけの結果、心血管病をまとめた主要な結果、死亡全体では、答えている疑問が変わります。Manson(2019)のように、主な結果と副次的な結果で見え方が異なる研究では、目立つグラフの見出しに加え、中心の結論まで読むことが役立ちます。

心臓病を予防したいという目的に対しては、処方薬で得られた利益、市販品に期待する利益、量を増やしたときの不利益を並べて判断します。病気を防げるかという大きな期待を、曖昧な感触の言葉だけで引き受ける必要はありません。購入前には、飲んだ後の血液検査の値と、長く追った病気の発生を、研究の対象と成分に沿って読み分けます。

よくある質問

中性脂肪が下がったら、心臓病も防げたと考えてよいか

中性脂肪の低下は血液検査の変化で、心臓病の予防は病気の発生を追って判断します。Abdelhamid(2020)では中性脂肪は下がる一方、心血管の出来事全体はほとんど変わらず、冠動脈の病気には小さな利益の可能性がありました。検査値の改善はその値の変化として受け取り、心筋梗塞や脳卒中まで減ったかは、それぞれの結果を確認する読み方が適切です。

高純度EPAの研究があるなら、EPA入りを選べばよいか

Bhatt(2019)の結果を読むには、高純度EPAという成分に加え、処方薬を使ったことと、治療中で危険の高い患者を対象にしたことが欠かせません。成分名が表示に含まれているだけでは、その試験と条件がそろったことにはなりません。購入を考える際は、研究で試したものとの対応を確認し、予防への利益だけでなく、同じ試験で報告された入院の増加にも目を向けます。

量を多くすれば、少量より予防に役立つか

量が多い試験で利益が大きい傾向を示したHu(2019)の分析はありますが、Nicholls(2020)の高用量の試験では、主な心血管の出来事に差が出ませんでした。加えて、Gencer(2021)では高用量の試験ほど心房細動の増加が大きい傾向でした。量を増やせば利益だけが増すという読み方を避け、成分や対象の違いと不利益まで含めて判断する必要があります。

主な結果に差がなければ、効果は完全にゼロなのか

明確な差が出なかったという結果は、考えられる小さな差まで完全に否定するものではありません。Manson(2019)では、一般の人の主要な心血管の出来事について、偽薬を上回る予防効果を示せなかったことが中心の結論です。小さな利益の余地を残すことと、購入する人に発症予防を約束することは区別して扱い、判断には試験全体の結果を使います。

この記事の限界

対象は一般の成人から、薬で治療中でも中性脂肪が高い患者まで幅があり、個人の検査結果に応じた処方の選択を決める内容ではありません。とくに高純度EPAで利益が出た試験は、危険の高い患者に対象を絞っています。複数の研究をまとめた分析にも製剤や量の違いが含まれ、冠動脈の病気への小さな利益は、確かさが低いという評価を伴います。

心房細動の分析には、副作用として集められた報告が含まれ、その発生を中心に調べた試験が少ないという制約があります。成分や対象が異なる大規模試験で結果がわかれた理由を含め、市販品ごとの利益と害の釣り合いを見定めるには、対象と製剤をそろえた検証を要します。

参考文献

  1. Bhatt DL. Cardiovascular Risk Reduction with Icosapent Ethyl for Hypertriglyceridemia. N Engl J Med 2019;380(1):11-22.
  2. Manson JE. Marine n-3 Fatty Acids and Prevention of Cardiovascular Disease and Cancer. N Engl J Med 2019;380(1):23-32.
  3. Nicholls SJ. Effect of High-Dose Omega-3 Fatty Acids vs Corn Oil on Major Adverse Cardiovascular Events in Patients at High Cardiovascular Risk: The STRENGTH Randomized Clinical Trial. JAMA 2020;324(22):2268-2280.
  4. Hu Y. Marine Omega-3 Supplementation and Cardiovascular Disease: An Updated Meta-Analysis of 13 Randomized Controlled Trials Involving 127 477 Participants. J Am Heart Assoc 2019;8(19):e013543.
  5. Abdelhamid AS. Omega-3 fatty acids for the primary and secondary prevention of cardiovascular disease. Cochrane Database Syst Rev 2020;3:CD003177.
  6. Gencer B. Effect of Long-Term Marine ɷ-3 Fatty Acids Supplementation on the Risk of Atrial Fibrillation in Randomized Controlled Trials of Cardiovascular Outcomes: A Systematic Review and Meta-Analysis. Circulation 2021;144(25):1981-1990.

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よくある質問

中性脂肪が下がったら、心臓病も防げたと考えてよいか

中性脂肪の低下は血液検査の変化で、心臓病の予防は病気の発生を追って判断します。Abdelhamid(2020)では中性脂肪は下がる一方、心血管の出来事全体はほとんど変わらず、冠動脈の病気には小さな利益の可能性がありました。検査値の改善はその値の変化として受け取り、心筋梗塞や脳卒中まで減ったかは、それぞれの結果を確認する読み方が適切です。

高純度EPAの研究があるなら、EPA入りを選べばよいか

Bhatt(2019)の結果を読むには、高純度EPAという成分に加え、処方薬を使ったことと、治療中で危険の高い患者を対象にしたことが欠かせません。成分名が表示に含まれているだけでは、その試験と条件がそろったことにはなりません。購入を考える際は、研究で試したものとの対応を確認し、予防への利益だけでなく、同じ試験で報告された入院の増加にも目を向けます。

量を多くすれば、少量より予防に役立つか

量が多い試験で利益が大きい傾向を示したHu(2019)の分析はありますが、Nicholls(2020)の高用量の試験では、主な心血管の出来事に差が出ませんでした。加えて、Gencer(2021)では高用量の試験ほど心房細動の増加が大きい傾向でした。量を増やせば利益だけが増すという読み方を避け、成分や対象の違いと不利益まで含めて判断する必要があります。

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