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お酒は筋トレの効果を消すのか|飲酒と筋肉の合成の試験の数字

24%低かったのは、大量飲酒後の筋肉の合成速度です。筋力の回復では結果が異なった試験を比較し、短時間の反応から長期の筋トレ効果や飲める杯数まで判断する飛躍を避けます。

お酒は筋トレの効果を消すのか|飲酒と筋肉の合成の試験の数字

筋トレをした日にお酒を飲むと、その日の頑張りは消えてしまうのでしょうか。運動後の大量飲酒で筋肉の合成速度が下がった試験はありますが、鍛えた効果が丸ごと消えたという結果ではなく、筋力の回復への影響も試験によって異なります。 立川駅北口で運動帰りに待ち合わせをしているとき、スマホで「お酒で筋肉がつかなくなる」という話を見れば、飲む予定だけでなく、運動した意味まで気になるものです。

この話を読むときは、飲んだ量と測ったものを先に見ると、結論の大きさをつかみやすくなります。筋肉の材料を組み立てる速さ、脚が出せる力、長く鍛えた後の筋肉量は、それぞれ測定の対象が違います。「合成が下がった」という数字を、そのまま体にある筋肉が失われた割合として受け取ると、研究よりも強い話になります。

また、飲酒後に筋力の差が出なかった試験もあります。こちらも、合成の低下を打ち消した結果として読むのではなく、運動の内容や参加者を含めて比べる必要があります。お酒を飲むかどうかの判断に使うなら、強い見出しだけで決めず、量・比較相手・測定項目をそろえて読んでいきます。

筋トレの後の飲酒で下がった筋の合成速度

Parr(2014)が試したアルコールの量は、体重 1 kg あたり 1.5 g です。研究で使われた標準飲酒量の表現では 12±2 杯分に当たり、少し口をつける程度とは大きく違う、大量の飲酒でした。対象はオーストラリアの運動習慣のある少人数の男性で、筋トレに自転車の運動を組み合わせた後の反応を調べています。

参加者は、プロテインだけをとる条件、プロテインとアルコールをとる条件、炭水化物とアルコールをとる条件を順に経験しました。このように同じ人が異なる条件を経験して比べる方法を、交差試験と呼びます。別々の人を比べる場合より、もともとの体の違いを抑えて検討しやすい方法です。Parr(2014)では、たんぱく質をとった条件が比較の基準になっています。

測ったのは筋原線維たんぱく質の合成速度です。筋原線維は筋肉の中で力を生み出す構造で、そのたんぱく質が作られる速さを見ています。筋肉そのものを長期間育てて、増えた重さを比べた試験とは測定の内容が異なります。

Parr(2014)では、プロテインだけの条件に比べ、アルコールとプロテインの条件で合成速度が 24%、アルコールと炭水化物の条件で 37%低くなりました。一方、運動前の安静時との比較では、どの条件でも合成速度は上がっていました。つまり、大量に飲んだ条件では運動後の合成の高まりが抑えられた、というのが結果の読み方です。「下がった」の比較相手が、安静時なのか、飲酒なしの運動後なのかで意味が変わります。

この試験からまず受け止めたいのは、たんぱく質を一緒にとっても、飲酒なしの条件と同じ合成速度には届かなかった点です。プロテインを飲んだから大量のお酒の影響を帳消しにできる、という期待には合いません。回復を優先する日は大量飲酒を避けます。筋肉の合成をできるだけ妨げたくない人にとっては、飲酒後に何かを足す工夫より、飲む予定そのものを見直す理由になる結果です。

脚の力が戻る過程では結果が異なった

合成速度の次に見たいのは、運動後に筋力がどう戻るかです。Barnes(2010)は健康な男性 11 人に、太ももの筋肉を伸ばしながら強く力を出す運動を 300 回行わせ、その後の飲み物を比べました。この運動は伸張性運動と呼ばれ、筋を強く傷める負荷をかけるために使われています。ふだんの運動の気軽な再現というより、回復過程を調べるための厳しい条件です。

Barnes(2010)で飲んだアルコールは体重 1 kg あたり 1 g で、比較相手は同じカロリーのアルコールなしの飲み物でした。アルコールをとった後は、動かしながら出す力でも、動かさずに出す力でも、運動後の筋力の落ち込みが大きくなりました。一方で筋肉痛や、血液で調べた筋の損傷の指標には、飲み物による差がありませんでした。痛みの強さだけでは、力の戻り方の違いを十分に表せない結果です。

これに対し、Levitt(2017)は筋トレ経験のある女性 13 人を調べました。脚の強い伸張性運動を行った後に、アルコールのある飲み物と比較用の飲み物を飲み、回復を比べています。運動から 24 時間後にはどちらの条件でも脚の力が下がりましたが、飲み物の違いによる筋力の回復や炎症反応の差は見られませんでした。運動の影響はあっても、そこへ飲酒が加わったときの差は明瞭でなかった、という結果です。

McLeay(2017)も、若い女性 8 人で同様に運動後の飲み物を比べています。体重 1 kg あたり 0.88 g のアルコールと、同じカロリーの比較用の飲み物を使い、運動後の数日間の回復に差は見られませんでした。ただし、参加者がとても少なく、実際にある差を見逃した可能性が残る試験です。

男性の試験で悪化し、女性の試験で差が出なかったことから、Levitt(2017)は性別による違いの可能性を挙げています。これは別々の試験を並べた著者の推測であり、男女を同じ量・同じ条件で直接比べて確かめた結果ではありません。性別だけで飲酒後の回復を予測するよりも、それぞれの試験の条件を保ったまま読む必要があります。

研究をまとめても、体内の反応と運動成績はそろわない

Lakićević(2019)は、筋トレ後の飲酒と回復を扱った 12 本の研究を集めた系統的レビューです。系統的レビューとは、決めた条件で研究を探し、その結果をまとめて評価する方法です。このまとめでは、筋力、瞬間的に力を発揮する能力、筋持久力、筋肉痛、運動をきついと感じる程度は、飲酒で変わらないという結果でした。

一方、同じレビューでは、筋肉の合成速度や血液中のアミノ酸、テストステロンは下がり、コルチゾールは上がる方向が報告されています。アミノ酸はたんぱく質の材料で、テストステロンとコルチゾールは体の働きを調節するホルモンの一種です。筋力を発揮する検査の結果と、体の中で進む回復に関わる反応が、同じ方向に動いていない点が特徴です。

ここで、筋力の検査に差がないことだけを取り上げると、合成速度などの変化が抜け落ちます。逆に、体内の反応が悪い方向だったことだけを取り上げると、実際に測った運動成績では差が明瞭でなかった点が抜け落ちます。Lakićević(2019)の結論には両方が含まれており、「飲酒は影響しない」と「飲酒ですべて台なしになる」のどちらかだけに寄せると、結果の一部を省くことになります。

研究をまとめたことは、小さな試験ごとの結果を見渡す助けになります。ただし、このレビューのもとになる試験も小規模で、ホルモンや合成速度の変化から、将来増える筋肉量を計算する材料はそろっていません。現時点で押さえやすいのは、運動後の力の出しやすさと、筋肉を作る過程の双方を見る必要があるという点です。

広告で「研究で影響なし」と書かれていたら、影響がなかった項目まで読むと、主張の範囲が明確になります。筋肉痛を測った話なのか、脚の力を測った話なのかで、支持される内容が変わります。体内の検査値を扱う説明にも同じ読み方を使うと、測っていない筋肉量や長期の成果まで話が広がっている箇所に気づきやすくなります。

試した量の一覧から、杯数の上限を作らない

「何杯までなら大丈夫」という疑問には、少量から多量まで段階的に比べた試験が必要です。今回の個別試験は、決めた量のアルコールを飲んだ条件と、飲まない条件を比較する形です。量の一覧は、試験が扱った範囲を見るために使い、許容量の一覧としては使いません。

飲んだ量と、測定した結果を並べると、同じ飲酒の研究でも問いが違うことが見えてきます。比較の単位は飲酒の有無だけでなく、運動の種類、参加者、回復の何を測ったかまで含みます。

研究(著者 年) 対象と人数 飲んだ量 測ったもの 結果
Parr(2014) 運動習慣のある男性・少人数 体重 1 kg あたり 1.5 g 運動後の筋の合成速度 プロテインのみより、プロテイン併用で 24%、炭水化物併用で 37%低い
Barnes(2010) 健康な男性 11 人 体重 1 kg あたり 1 g 筋力、筋肉痛、筋の損傷の指標 筋力の落ち込みが大きい。筋肉痛などは差なし
Levitt(2017) 筋トレ経験のある女性 13 人 アルコールありと比較用の飲み物 筋力の回復、炎症反応 飲み物による差なし
McLeay(2017) 若い女性 8 人 体重 1 kg あたり 0.88 g 運動後の筋力の回復 飲み物による差なし

たんぱく質の追加や筋肉痛で判断しない

Parr(2014)の比較では、プロテインをとったうえで大量のアルコールを加えた条件でも、合成速度が低くなりました。たんぱく質を用意することと、飲酒の影響を避けることを、一つの対策で済ませようとすると、この結果を読み違えます。飲む前後にプロテインを足すという提案を見るときも、実際に飲酒なしの条件まで合成が戻ったのかを確かめるのが要点です。

また、プロテインを併用した条件と炭水化物を併用した条件の差は、そのまま「取り戻せた筋肉の量」を表すものではありません。Parr(2014)の結果は、運動後のたんぱく質の組み立てがどの程度進んだかを比べています。食事の組み合わせを変える工夫を考える場合も、まずその測定内容に合わせて期待を置く必要があります。

自分の筋肉痛がいつもと同じだったことも、お酒の影響を判定する十分な材料にはなりません。Barnes(2010)では、飲酒後に筋力の落ち込みが大きくても、筋肉痛には差がありませんでした。痛みという体感と力の測定は異なる結果を示しており、「痛くなかった」「いつもどおり痛い」といった感覚だけで筋の合成まで判断すると、測っていない部分が残ります。

筋トレの回復を優先したい人には、大量飲酒を組み込んでから補う工夫を探すより、運動後に飲まない選択が取りやすい予定を作るほうが、この試験の結果に沿っています。飲酒量の調整は、体の事情を含めて考える必要があります。飲酒をやめようとして手の震えや汗が出る人は、内科か専門の外来に相談してください。こうした症状があるときは、筋肉への影響を比べる話よりも、飲酒を変える際の医療的な支援を優先します。

運動した日を無駄と決めず、次の予定を変える

すでに飲んだ後で「今日の筋トレは無意味だった」と決めつけると、Parr(2014)の結果より話を広げることになります。この試験では飲酒の条件でも、安静時より合成速度は上がっていました。結果が示したのは、飲酒なしの条件と比べたときの合成の抑制です。運動による反応が完全になくなった、という説明とは食い違います。

一方、女性の筋力回復の試験で差が出なかったことを、自分がたくさん飲む理由にするのも、測定した項目から離れます。Levitt(2017)とMcLeay(2017)は、筋を強く傷める運動の後に、力が戻る経過を調べた試験でした。日々の練習を続けて筋肉がどれだけ増えるか、という問いに答えるには、その経過を追う別の測定が必要です。試験で直接測ったところに目を戻すと、過剰に落ち込むことと、都合よく安心することの両方を避けやすくなります。

飲酒の予定を見直す際も、研究の量を自分の許容量として計算する必要はありません。まずは、運動の終了後に飲む予定が続いているか、飲み始めると大量になりやすいかを、実際の予定と照らします。筋肉の回復を優先する日なら、飲酒を前提にしない食事や過ごし方を先に決めておくと、帰り道でその場の流れだけに任せずに済みます。

合成速度の低下を知ることは、過去の練習を採点し直すためより、次の行動を選ぶために役立ちます。飲酒をした事実だけで成果をゼロと扱わず、飲まなかった条件では合成がより高かったという比較を、次の予定に反映します。筋トレの後をいつもの飲み会で埋めず、回復を優先して過ごすために予定を空けます。

よくある質問

少し飲んだだけでも筋肉の合成は同じだけ下がるのか

Parr(2014)が示した低下は、大量のアルコールをとった条件での結果です。少量へそのまま当てはめたり、飲んだ量に比例させて低下率を計算したりする根拠はありません。試験の量は影響を調べた条件として読み、そこから少量の安全性まで決めない扱いが必要です。少し飲んだ日の成果を、論文の割合を使って差し引くような読み方は避けます。

女性の試験で差がなければ女性は飲んでもよいのか

女性を調べたLevitt(2017)とMcLeay(2017)では、筋力の回復に飲み物による差が出ませんでした。対象が少なく、運動の負荷も限定された試験で、性差は男性の別の試験と並べた際の推測です。女性だから影響を受けないという保証として使うより、女性を対象にした直接の結果として読むのが適切です。性別だけを理由に、運動後の大量飲酒を選ぶ判断は支えられません。

運動後はどれくらい時間を空ければよいのか

今回の研究は運動後の回復過程に注目していますが、飲み始める時刻を段階的に変えて、安全な待ち時間を決めた試験ではありません。何時間待てば合成への影響がなくなるかという基準は、今回の結果からは言えません。時間の数字だけで線を引くより、回復を優先する日の飲酒予定を外す、という選択に結びつけるほうが、実際に比べた条件に近い使い方です。

この記事の限界

比較の中心は、運動後に決められた量のアルコールを飲む条件と、飲まない条件で、少量から大量までを連続して比べた結果は不足しています。筋力回復の試験には筋を強く傷める運動が多く、筋の合成を測った試験も短い回復過程を扱っています。そのため、日本人の高齢者や持病のある人の日常的な運動・飲酒を判断するには、対象と条件の隔たりがあります。

ここでの研究の読み比べは、個人の飲酒量や飲酒をやめる手順を医学的に決めるものではなく、運動後の反応を理解するための説明です。短時間の合成速度の低下が、長く筋トレを続けたときの筋肉量や筋力の伸びにどう結びつくかは、これらの試験の測定範囲を超えます。

参考文献

  1. Parr EB. Alcohol ingestion impairs maximal post-exercise rates of myofibrillar protein synthesis following a single bout of concurrent training. PLoS One 2014;9(2):e88384.
  2. Barnes MJ. Acute alcohol consumption aggravates the decline in muscle performance following strenuous eccentric exercise. J Sci Med Sport 2010;13(1):189-193.
  3. Levitt DE. Effect of alcohol after muscle-damaging resistance exercise on muscular performance recovery and inflammatory capacity in women. Eur J Appl Physiol 2017;117(6):1195-1206.
  4. McLeay Y. Effect of Alcohol Consumption on Recovery From Eccentric Exercise Induced Muscle Damage in Females. Int J Sport Nutr Exerc Metab 2017;27(2):115-121.
  5. Lakićević N. The Effects of Alcohol Consumption on Recovery Following Resistance Exercise: A Systematic Review. J Funct Morphol Kinesiol 2019;4(3):E41.

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よくある質問

少し飲んだだけでも筋肉の合成は同じだけ下がるのか

Parr(2014)が示した低下は、大量のアルコールをとった条件での結果です。少量へそのまま当てはめたり、飲んだ量に比例させて低下率を計算したりする根拠はありません。試験の量は影響を調べた条件として読み、そこから少量の安全性まで決めない扱いが必要です。少し飲んだ日の成果を、論文の割合を使って差し引くような読み方は避けます。

女性の試験で差がなければ女性は飲んでもよいのか

女性を調べたLevitt(2017)とMcLeay(2017)では、筋力の回復に飲み物による差が出ませんでした。対象が少なく、運動の負荷も限定された試験で、性差は男性の別の試験と並べた際の推測です。女性だから影響を受けないという保証として使うより、女性を対象にした直接の結果として読むのが適切です。性別だけを理由に、運動後の大量飲酒を選ぶ判断は支えられません。

運動後はどれくらい時間を空ければよいのか

今回の研究は運動後の回復過程に注目していますが、飲み始める時刻を段階的に変えて、安全な待ち時間を決めた試験ではありません。何時間待てば合成への影響がなくなるかという基準は、今回の結果からは言えません。時間の数字だけで線を引くより、回復を優先する日の飲酒予定を外す、という選択に結びつけるほうが、実際に比べた条件に近い使い方です。

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